コラム
「4Kテレビ」は日本を救うのか? 米CES報道にみる“いつか来た道”:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
1月、米国のラスベガスでコンシューマ向けのエレクトロニクス・デジタル製品が勢揃いする「CES」が開催された。多くのメディアは日系メーカーの「4Kテレビ」を紹介していたが、この報道を見て不安に感じた人も多いのでは。その不安とは……。
早くも値下げ合戦の兆し
CES報道をチェックするうち、私は日経新聞が伝えていたある文言が気にかかった。4Kで先鞭(せんべん)をつけた東芝が、特定の売れ筋のタイプについて、「1インチ1万円以下」を目指すと触れていたからだ。
従来のプラズマ、あるいは液晶にしても、発売当初は高値だった。4Kもその例外ではない。従来型の価格下落を補う意味で投入した4Kという新戦略商品は、早くもコモディティ化が始まろうとしているのだ。
また今回のCESでは、韓国のサムスンやLGといった世界1位、2位のメーカーが早くも4Kを投入している。一昨年、日本勢の独壇場だった4Kは、早くも追いつかれてしまったのだ。ここ10年間で日本製品を駆逐した韓国勢が、技術面のみならず、価格面で手をこまねいているはずはない。
繰り返しになるが、私はテレビ技術を分析する専門家ではない。ただ、ここ数年、日本メーカーが衰退していく過程をつぶさにチェックしていたため、今回の4Kに関する日本メーカーの楽観度合い、そしてそれを紋切り型に報じる一般メディアの仕事ぶりに危機感を抱いたのだ。
4K技術は素晴らしいと率直に思う。ただ、市場の需要や他国競合メーカーの動向を度外視して突き進むような日本企業の戦略は、“いつか来た道”をもう一度たどることになるのではないだろうか。
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