検索
コラム

広島電鉄でクーデターが起きた、なぜ杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

広島電鉄本社で取締役会が開催され、社長不在のまま「社長を平取へ降格、専務取締役の社長昇進」が決議された。日本最大の路面電車路線網を持ち、昨年は開業100周年を迎えた広島電鉄のクーデター。その背景には何があったのか。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

いずれ値上げは必要になる

 広島電鉄の路面電車運賃値上げについては、いずれ実施することになると椋田新社長も語っている。広島電鉄では全国各地から譲受した路面電車車両が活躍し、鉄道ファンを楽しませてくれている。しかし老朽化は激しく、順次廃車して新型車両に置き換えなくてはいけない。

 前社長は昨年秋「120編成が運行開始から約半世紀となっており、このうち、特に運行に支障が出そうな40編成については、約15年計画で新型の低床車に入れ替えたい」と発表していた。これは停留所の改造も含めて120億円ほどの費用が必要となるという。前社長はその原資として「現在150円の市内均一運賃を180円へ値上げする」と、具体的な金額に言及した。この金額は取締役会に伝えられていなかった。

 椋田新社長は「いったん白紙に戻し、市民生活への影響や投資額の大きさを見直す」としている。確かに現場をリサーチすれば、改造で延命できる車両もあるかもしれないし、新車コストも15年のうちに変わってくるかもしれない。筆者の憶測にすぎないが、前社長が独断で進めようとした契約には、新車の発注もあったのではないか。そこに恣意契約の可能性もあったかもしれない。新政権のもと、国土交通省は地方鉄道の老朽施設改修費用の補助金を増額する方針とも伝えられており、2012年度の補正予算に盛り込まれる方向だ。新社長には補助制度を利用し、運賃への全額転嫁を回避しようという狙いがあるだろう。


広島電鉄5000形「GREEN MOVER(グリーンムーバー)」古い車両を大切にしつつ、新型LRTも導入が進んでいる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る