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コラム

なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

秩父鉄道の踏切で自転車に乗った小学生が電車と接触して亡くなった。4年前にもこの踏切で小学生が亡くなっている。なぜ事故は防げなかったのか。踏切に関する政策を転換し、「安全な踏切」を開発する必要がある。

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第4種踏切が行政から取り残されている

 踏切に関する国の補助制度は存在する。1961年に施行された「踏切道改良促進法」基づき、鉄道・運輸機構が実施する「踏切保安設備整備費補助金」制度だ。鉄道会社が踏切遮断機や警報機を設置しようとする場合、鉄道事業者に対して費用の2分の1、または3分の1を補助する制度である。また、自治体側も独自に踏切改良に関する補助制度を持つ市町村がある。こうした制度をうまく利用すれば、総費用の半額程度で踏切を改良できる。その自治体の負担分についても、政府が無利子で貸してくれる。

 ただし、この制度を利用するためには、その踏切を国土交通大臣が指定する必要がある。そして困ったことに、国土交通大臣が指定できる踏切道は、線路と国道、都道県道、市区町村道までだ。主にクルマが通る踏切を前提としており、第4種踏切に用いられるのような細道では補助を受けられる可能性は極めて低い。

 立法や行政のホンネやタテマエがまかり通る中で、今日も第4種踏切で人が死ぬ。もちろん安全確認をしないで踏切に侵入する者に非がある。子どもに踏切の危険性を教育しない大人の責任もあるだろう。しかし、そんな責任論よりも、私たちは現実と向き合わなければならない。


横浜市鶴見区の総持寺踏切は東海道線、横須賀線、京浜東北線、東海道貨物線をまたぎ、開かずの踏切として知られていた。2010年に朝夕ラッシュ時間帯のみ閉鎖。2012年4月1日に廃止された

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