アベノミクスを世界はどう見ているのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
金融緩和の方向に大きくかじ取りを行った日本銀行。アベノミクスの一環としての動きだが、これを世界ではどのようにとらえているのだろうか。
ただ、ちょっと気になるのは、日銀の緩和ぶりが米FRBなどに比べるとはるかに小規模であるということだ。浜田教授の言うことが正しければ、円とドルの量的なバランスを逆転させなければ円安が続くことはない。つまりFRBのQE(量的緩和)が大きくて日銀の緩和が追いつけないと、結局は円高に揺り戻すことになりかねないということだ。もし円安基調が逆転するようなことになったら、せっかく明るい雰囲気になっている日本の経済界もしぼんでしまうかもしれない。
ただ金融緩和を続ければ続けるほど、インフレ圧力が高まることも事実だと思う。2%というインフレ目標を決めたことで、その直前でインフレ回避にかじを切ればいいと浜田教授は言うが、果たしてそんなにうまくかじ取りができるものかどうか。そしてそれが長期金利の急騰を招かずにできるのかどうか。もし長期金利が急騰すれば、景気に悪影響が出るばかりでなく、日本政府の国債発行金利も急騰して資金調達がしにくくなり、地銀をはじめ金融機関が保有する国債に巨額の評価損が発生する懸念もある。
その辺りのかじ取りは難しい。何せ日本は世界でも人口減少の「先進国」。その課題をどう解決するか、世界から注目されている国でもある。浜田教授は、人口減少は関係ないと断言するが、それでも人口増が経済に配当をもたらしたなら、人口減が負担になるのも論理的には納得できそうだ。
アベノミクスが本当に効果があるのかどうか、副作用はないのかどうか、その答はおそらく今年末ぐらいにおおよそ見えてくるかもしれない。来年のダボス会議には誰が日本政府代表として出席するのだろう。
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