コラム
不況脱出かインフレか、アベノミクスの行く末は?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
“アベノミクス”では不況脱出のために、金融緩和を行うことが重要としている。しかし、金融緩和を行った際に怖いのがインフレである。
巨額の政府債務と膨らみ続ける中央銀行のバランスシート(つまりは紙幣が供給され続けているということ)が、悪性のインフレをもたらすことはないのか。それを懸念する声は依然として強い。もっともポール・クルーグマン教授に言わせれば、とにかく今は不況から脱出することに専念すべきであり、インフレは後から心配しろということになる。
「インフレになりそうになったら、そこで金融緩和を止めればいい」と浜田先生も言う。ただ実際には、そのタイミングは難しいのだろうと思う。何せ、現在の世界経済は、今まで経験したことのない世界にいる。金融緩和は非伝統的な手法だし、先進国の政府債務がこれほど膨らんだこともない。それに多くの先進国は人口が減りつつある(米国は人口が増えるがそれは例外的だ)。
人口が減れば、当然のことながら需要も伸びなくなる(特に生活水準の高い先進国では)。なぜなら消費を増やすことが生活水準の向上につながりにくくなっているからだ。だからこそ自民党は、孫の教育資金については一人当たり1500万円の贈与を無税にしようとしている。高齢者から若い層に所得を移転することによって消費を少しでも増やそうというのである。
世界がこの超金融緩和時代を乗り切って、いつノーマルな状態に戻ることができるのか、それは誰にも分からない(もっと言えば、ノーマルな状態に戻れるかどうかさえまだはっきりとは分からないのである)。とはいえ、とにかく「アベノミクス」に頼らざるをえないのもまた事実だと思う。
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