法然上人から学ぶ未来経営(2/2 ページ)
世の中が混沌としていた平安時代末期に法然が説いた「共生」という概念。筆者はこの言葉は今後の企業経営を考える上でのヒントにもなるという。
「我がこと」だけを考えてビジネスを行っていくと、短期的にはいいかもしれませんが、長期的には自滅することになります。顧客に損をさせるようなことをすれば信頼を失い、顧客は離れていきますし、働く人の幸せを考慮に入れずに酷使することだけ考えれば不満だらけの職場になり、自ずと商品やサービスの質に悪影響を及ぼすことになります。また、取引先を叩いて安い価格を出させれば、そのしわ寄せが品質に及んだり、最悪の場合には相手の会社を倒産に追い込むことになったりするでしょう。流通に例えて言えば、そもそも物を作ってくれるところがなければ、販売業を営むことはできません。
未来企業は、法然上人の思想に酷似した考え方を持ち、「1.社会の繁栄や環境の保護に貢献してこそ、企業の繁栄がある」「2.他の企業と協業し、成果を分かち合ってこそ、好機を培養し、共に豊かになることができる(=ノン・ゼロ・サム理論)」「3.企業は働く人(社員)や顧客と運命共同体であり、目標や情熱を共有し、お互いの幸せを最優先に掲げて行動してこそ、長期的な繁栄が望める」の原則に則った経営をしています。
法然上人の教えは、「人間であるということは、他者に対する責任、社会に対する責任、自然に対する責任、そして、過去や未来に対する責任を負うことだ」という厳しい世界観にもつながっていますが、これはまさしく、『未来企業は共に夢を見る』の中で取り上げた企業が主張し、体現していることでもあります。
偶然の巡りあわせといえばそれまでなのですが、私の祖父がライフワークとして取り組んだ法然の研究が私の仕事とつながっていたことに深い感動を覚えたのでした。(石塚しのぶ)
関連記事
- 本当の“顧客ロイヤルティ”とは何を意味するのか
顧客ロイヤルティの、「ロイヤルティ」って一体何を意味するのでしょう。世界最大のオーガニック/自然食スーパー、ホール・フーズ・マーケットの逸話に思うこと。 - アマゾンに勝つための小売店舗ビジネスのあり方とは
新年の祝いのムードもつかの間、米国の小売業界を脅かす過酷な現実。それはネットに押されて、売上が鈍っているということ。小売店舗がその状況を挽回するためにはどうすればいいのだろうか。 - ソーシャル時代のリーダーの条件は“己を知ること”
米国のビジネス界で新たな経営ツールとして注目を浴びる「戦略的企業文化」。戦略的企業文化経営に着手する上での第一歩となるのが、経営者自身が「己を知る」こと。今回はザッポス社CEOトニー・シェイの「パーソナル・コア・バリュー」を紹介します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.