選挙が近づくと出版社が笑う? “おいしい仕事”の裏側:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
7月の参院選挙前に、水面下である事象が起こっている。それは「選挙が近づくと出版社が笑う」というものだ。一般の人にはあまり知られていない、出版ビジネスの裏側を紹介しよう。
出版不況の裏返し
こうした内幕話を書いていると、読者の中には「?」をつける向きもいるはず。昨今は新聞だけでなく、雑誌や書籍の売り上げが漸減傾向をたどる「出版不況」の真っ只中にある。いかに政治家というネームバリューがあろうとも、それほど多数の刊行点数をさばける余地はないのでは、という疑問を抱く読者は少なくないだろう。
だが、現状はその逆なのだ。
国会議員ともなれば、その支援団体、支持母体には多数の有権者がいる。「1人当たり5000部ほど発行し、8割程度の実売が見込めるので、出版社としては十分にペイできる計算」(先の編プロ幹部)なのだとか。
現状、「芥川賞受賞作家といえども、継続的に人気作を刊行していなければ、初版は多くて7000部程度」(別の編プロ関係者)。このうち、8割程度の実売が見込める著者は「極めて少ない」(同)。書籍が売れない時代故、「政治家とその周辺が確実に購入してくれる自叙伝や政策提言本の類いは、固い売れ筋」(同)というわけだ。
大手や中堅中小の出版社から、政治家が書いた本が相次いで刊行される背景には、こんな事情が潜んでいるのだ。
先に触れた通り、7月には参院選が控える。仮に与党自民党が苦戦するようなことになれば、またぞろ「総選挙」というキーワードがちまたに溢れることになる。政局が混迷すれば、政治家がアピールの場として“書籍”を選ぶ機会も増えるという構図だ。
本稿の見出しに据えた「選挙が近づくと出版社が笑う」というキーワードは、出版不況の深刻さの裏返しでもある。
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