“カルトライク”な文化が大企業を打ち破る!?(2/2 ページ)
売り上げを5年間で7倍にした驚異のヨガ・ウェア・メーカー、ルルレモン。“カルトライク”と称される企業文化の強烈な求心力が強さの秘密だ。
このように、ルルレモンのビジネスは「小ぶり」ではないが、「ニッチ」ではあります。ルルレモンの商品は誰でもが買える廉価品ではないからです。ルルレモン自身も、「ヨガのウォルマート」になろうと思ってはいません。つまり、マス(大衆)に売ろうとは思っていないのです。代わりに、ルルレモンを熱愛し、ルルレモンのファッションを通してルルレモンと一体化したいと思うお客さんたちに、できるだけ多くの商品を買ってもらおうと思っています。その思惑通り、ルルレモンの顧客は一着98ドルもするヨガパンツを嬉々として買っていきます。
いわば、ルルレモンの顧客は「洋服」を買っているのではなく、ルルレモンという「イデオロギー」と「メンバーシップ」に対してお金を払っているのです。ルルレモンのコア・パーパス(存在意義)は『平凡から偉大さへと世界を変える』です。ルルレモンの「マニフェスト」にうたわれている価値観(コア・バリュー)の数々……「人生に予行練習はない」「友情はお金より尊い」「前向きな考えを選べ」……などに顧客はひかれ、そんな生き方に共感してルルレモンの商品を買っていきます。
ルルレモンは「コミュニティ」です。ルルレモンの店舗では週に1度、無料ヨガ・クラスが提供されます。そして、店員は周辺地域でヨガを教えるインストラクターやその他アスリートを「アンバサダー」としてリクルートしてくるそうです。「アンバサダー」は店舗でヨガ・クラスを教えたり、商品や店舗に関するフィードバックを提供したり、広告塔としての役割を果たします。各店舗に行くと、「アンバサダー」の写真がポスターにして掲示してあります。
店舗がヨガとルルレモン的生き方に共感する人々が集まる場所として形作られているだけではなく、店員もルルレモン・ブランドを背負い、街に出て行くという意識的な活動をしているというわけです。
ルルレモンの成功に目を付け、多くの企業がヨガ・アパレルに手を染め始めています。まず、ギャップが展開する「アスレタ(Athleta)」。ギャップほどの財力をもってすれば、ルルレモンの商品やマーケティングを模倣するのは難しくはないし、実際そうしていますが、ルルレモンが強いのは、そのブランドの基盤となる企業文化と価値観を設立当初から入念に築きあげ、今なお徹底して追い求めている点です。「スタイル」は真似できても、「価値観」を容易に真似することはできません。
「信じるもの」や「夢」の上に旗を立て、そこに共感者たちを集めること。これからの企業にとって、いかにそれが重要かを物語ってくれる一例だと思います。(石塚しのぶ)
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