犯人は「桜」を切ったのか? しなの鉄道伐採事件:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
どんな趣味にも素行の悪い人はいる。特に最近は鉄道ファンの非常識な行動やマナーの悪さが問題になっている。先日も、桜の伐採という被害を受けた「しなの鉄道」が、逆に鉄道ファンに反感を買うという“珍事”が起きた。
人気撮影地には「公認お立ち台」を
もうひとつ提案がある。あの場所はしなの鉄道の敷地というが、もう少し明確にする必要があるのではないか。鉄道用地の敷地を示す標識は、上面に「+」の印で赤や黄色のペイントに塗られたコンクリートの柱である。しかしそれも、知識を持っていなければ見落とされてしまう。雪が降れば埋もれる。枯れ葉で隠れたりもする。
あるいは人気の撮影スポットについて「敷地に入らないでください」ではなく「ここには入っていいですよ」という公認撮影場所を作ってみてはいかがだろうか。簡易な作りでいいから、そこから奥に入れば明らかに不法侵入。そういうカタチにしておけば、誰が見ても法令違反だ。その場にいる人が注意喚起できるし、言ってダメでも通報しやすい。電車の運転士さんだって発見すれば報告しやすいだろう。
今回の事件、「桜」に関してはもう少し落ち着いて考えたほうがいい。そして、同じ事件を繰り返さないために、ちょっとした工夫が必要だと思う。それこそ鉄道ファンからアイデアを募集してもいいのではないか。他の多くの趣味人と同様に、困った人物は一握り。鉄道ファンのほとんどは、その存在に迷惑している良人である。きっといい知恵を貸してくれるはずだ。
そして、犯人は名乗り出なさい。通販サイトを調べたら桜の苗木は3000円くらいだ。お詫びに倍の数を買って植えて(もちろん勝手に植えてはいけない。しなの鉄道の了承を得なければいけない)、10年間、ときどき様子を見に行きなさい。米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが桜を切った逸話も、彼が正直に告白したから美談となった。こちらも美談に転回しておこうじゃないか。このままでは国民的悪者になってしまうぞ。
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