コラム
これからの“死”の話をしよう(2/2 ページ)
何事においても、軽微であればあるほどすぐに決めて取り掛かれるし、迷いなく前向きに行動できる。しかし重大なことは、なかなか決められないし、取り組み姿勢も恐る恐るになりがちだ。
もちろん、ひとりひとりの命の尊さは昔も今もこれからも同じであって、死そのものが軽くなっていいはずがない。身の回りで多く起こるから、軽く考えがちになるだけであり、それは戒められるべき思考である。しかしそれを、一概に悪いとは言えない。なぜなら、軽さは前向きさにつながるからだ。何事においても、軽微であればあるほどすぐに決めて取り掛かれるし、迷いなく前向きに行動できる。しかし重大なことは、なかなか決められないし、取り組み姿勢も恐る恐るになりがちだ。
同じように、死を重大だと思うと「どのように死ぬか。それまでどのように生きるか」という大切な決めごとを先送りし、死に対して単に恐れや不安を抱いたまま時間ばかりが過ぎてしまう。大切な決めごとができて、前向きに充実した人生を送る人が増えるなら、死を軽く考えるのも悪くはない。死に方と死ぬまでの過ごし方が、はれ物に触わるような、触れてはいけないテーマではなく、身近で気軽に話せるテーマになれば、年寄りの老後の充実だけでなく、若い世代にとっても大きな刺激や学びとなるはずだ。高齢化社会が死を身近なものにし、その結果、死というゴールを意識して人生を送る人が増えるならすばらしいことである。(川口雅裕)
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