コラム
株高企画が急増する影で、“総強気モード”がヤバい:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
週刊誌の中吊り広告や経済誌などで株高特集が目に付くようになった。安倍首相が主導するアベノミクスで市況は活況を呈しているが、いまのような“総強気モード”でいいのだろうか。
アベノミクスの幻想
1990年代の後半、私は東証の兜記者倶楽部に所属し、市況記事を書いていた。そのころ遭遇したのが、ITバブル相場だった。
インターネットが爆発的に普及し、PCや携帯電話端末などのハードを作る企業だけでなく、ネットを利用したサービス業を興す若手経営者がもてはやされた時期に当たる。
当時も現在と同様、経済や投資系の媒体だけでなく一般の週刊誌に投資関連の特集が溢れた。強気派のアナリストが総動員され、関連業種の先高観を煽(あお)りまくったのだ。
実態は携帯電話の販売店を統括するだけの企業が、“携帯電話はITの先駆的商品”と無理筋な解説まで付与され、個別株価が急騰するような局面さえあったことを鮮明に記憶している。
翻って、昨今の“アベノミクス相場”は、かつてのITバブルとダブる部分が多いと考えるのは、皮肉がすぎるだろうか。
先々週、イタリアの総選挙結果を受け、日経平均株価が急落する場面があった。同国の財政再建派と対立軸の勢力がきっ抗した結果、イタリアの政局不安が再燃。これが欧州経済危機への懸念につながり、日本の株式市況にも悪影響をもたらしたのだ。
「思惑だけで騰がった株式市況は、崩れるときも速い」(先の運用会社)との声が漏れていた。各種媒体に強気のコメントを寄せる関係者の大半は、市況活発化とともに業績が上がる証券界の人材が大半だ。演出された株高ムードは要警戒すべきだと、いくつものバブル市況をみてきた元経済記者は警告する。
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