我々は経験から学べているか? 震災時のバックアップ問題から考える:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
東日本大震災で露呈した、我々の危機管理の甘さ。その経験を今、生かせているだろうか。
もし松島基地のPCのデータが、自衛隊のどこかのサーバーに四六時中バックアップしてあれば、PCは別に持ち出さなくてもいいだろうし、紙のファイルの元データがあれば重たいファイルを避難させる必要もないはずだ。
個人のデータと自衛隊のデータでは機密度が違うから、簡単に比較することはできないとしても、個人のデータ管理は昔に比べれば格段に簡単になった。例えば携帯のアドレス。携帯を買い換えるたびにアドレス帳を移行しなければならなかった。それに携帯のアドレス帳とPCのアドレス帳を同期させることは難しかった。今では、例えばグーグルのアドレス帳を使えば、どの端末からも見ることも修正することも可能だ。文字データはもちろん写真や音声、動画までそれぞれの端末に依存することなくクラウド上に保存することができる。
自衛隊ならそれこそPCの端末や紙の書類など盗まれさえしなければ問題はないというぐらいのバックアップがあっておかしくない。しかし残念ながらテレビの報道を見る限り、そんな意識ではないようだ。
どうもこの辺りに、我々の危機管理の甘さが見えているような気もする。福島第一原発の事故の時も、菅首相の官邸は、事故対応の記録を取っておくこともできなかった。そこまで思いが及ばなかったということは、欠陥を見いだすべき訓練を真剣にやっていなかったということでもある。
福島第一原発の1号機で非常用復水器が稼働していなかった問題でも、40年間、一度も動かしたことがなかったということ自体、おかしな話だと思う。動かしたことがなければ動いたときにどういう状態になるのか、誰も分からない。動いていないということに気づかぬまま、1号機はメルトダウンしてしまう。想定された危機に対して想定した動きをしているだけで、予想外のことが起きたときには何もできないということになる。これはハードウエアの問題ではない。状況に対応する人間の問題だと思う。
物事に「絶対」ということはない。それが3.11の教訓だった。そうであれば、その時のためのバックアップをどう考えておくか。どれだけのシナリオを考えることができるか。それが生死の分かれ目になる。震災の記憶もそうだが、その教訓もどうやら薄れつつあるのではないだろうか。
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