今年の花見は発泡酒ではなく、ビール――そのネタは都合よすぎないか:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
テレビを見ていると、「今年の花見はビールが増えた」「お弁当が豪華になった」といった報道があった。株高の影響を受け、こうした報道が増えているが、ちょっと待ってほしい。それ、報道ではなく、イロモノ・リポートですから。
集客効果と当局へのおべっか
もう1つ、安易に景気回復と自説を交えたリポートを発表する向きの大半が、金融機関に勤務している点を見逃してはならない。
金融機関は国の免許、あるいは認可によって商売している。換言すれば、政府批判を展開しにくい業種でもあるのだ。
ここからは、心配性の私特有の戯れ言だ。冒頭で触れた通り、“株高・総強気モード”にしても、今回取り上げた“景気回復実感企画”にせよ、その中身は金融機関に勤務するエコノミストやアナリストが発した情報だ。今の時代はこんなことはないだろうが、私が現役記者時代には、こんな一面が確実にあったのだ。
「政府の施策をウチのエコノミストが声高に批判したあとは、(金融当局による)検査が格段に厳しくなった」(大手銀行の元幹部)……。
先にマスコミは横並び意識が強いと触れたが、昨今の安易な企画の増大は、危険な一面を持っているのだ。要するに、アベノミクスに対する疑問や批判が極端に薄まってしまうのだ。
最後に、旧知のエコノミストが発信したメルマガの一部を要約し、紹介する。このエコノミストは、政府の経済政策が間違っていると思えば遠慮なしに批判する反骨精神の強い人物。特定顧客向けのリポートなので名前は掲載しないが、こうした正論が紙面や番組企画に取り上げられなくなったときが、怖いのだ。
アベノミクスはまだ「見せ金」の段階にある。ただ、景気回復への期待が株式市況を押し上げ、企業や消費者の心理が改善しているだけ。政府としては、「泡」が弾(はじ※)けないうちに、一刻も早くコンクリートを流し込み、「弾けない泡」にしたいところではないか。
※ルビは編集部が追記しました。
日銀総裁人事も決まり、アベノミクスはこれから本格的に動き出し、真価が問われる。昨年来の市況好転が「見せ金」に終わるのか、「弾けない泡」になるのか、イロモノ・リポートからうかがい知ることはできない。
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