なぜ北総線の運賃は高いのか “円満解決”の方法を考える:杉山淳一の時事日想(6/6 ページ)
千葉県の北総鉄道の運賃が高額すぎると、利用者が国を訴えた問題で、東京地裁は運賃決定は適切という判断を示した。JRや大手私鉄の2倍から2.5倍という運賃は確かに異常。しかも北総鉄道は経常黒字なのだ。
北総鉄道の運賃を下げるには
こうした事情を考えると、北総鉄道の運賃を下げるには、線路施設の保有をやめて、全区間において成田スカイアクセスと同様に線路の賃料を支払う方式に転換すればいい。北総鉄道の建設債務はあまりにも負担が大きい。北総鉄道よりも運賃の高い東葉高速鉄道や埼玉高速鉄道も、その根源は建設債務である。北総鉄道の借金は民間銀行金利より高い財政投融資であった。こうした新線建設方式の反省から、つくばエクスプレスでは建設費について自治体からの無利子融資を受けるなど、公的支援が大きくなっている。その結果、つくばエクスプレスはフットワークが軽く、沿線人口の増加に即応して増発や車両の増備を実施している。金利を返さないかわりに便利を返している。
北総鉄道の運賃を下げ、千葉ニュータウンを通勤しやすい街へと再起動させるためには、北総鉄道を線路も保有する第一種鉄道事業ではなく、線路を借りて走る第二種鉄道事業に転換すべきだ。いわゆる公設民営という考え方である。北総鉄道は線路保守費用も含めて黒字経営であるから、債務負担がなければ値下げできる。都心直通列車は京成電鉄に任せて、北総線内の各駅停車は線内折り返しとする。通勤時以外の列車は2両編成程度に減らし、運行間隔も長くして線路使用料を節約する。
これで北総鉄道は優良企業になる。座れなくなって、都心へは乗り換えが必要になるかもしれないが、バカ高い運賃は下げられる。駅前のコンビニや自動販売機で回数券のバラ売りが行われ、鉄道会社が黙認するような異常事態は解消されるべきだ。
この場合、現在、北総鉄道が抱えている約900億円の建設費負担を線路保有会社(第三種鉄道事業者)が肩代わりしなくてはいけない。その役割を誰が引き受けるべきか。もはや自明であろう。千葉ニュータウン自体を失敗させた千葉県と都市再生機構である。両社が今年度限りで千葉ニュータウンから手を引くなど許してはいけない。きちんと北総鉄道の採算点まで面倒を見るべきだ。千葉県と都市再生機構は、もともと自前で用意すべきだった北総鉄道の建設費、約900億円を取り戻す意気込みで取り組んでもらいたい。
ただし、これは罰ではない。当時は公設民営というアイデアは一般的ではなかった。いまならできる。北総鉄道が安くて便利になれば、千葉ニュータウンは再起動できる。都心と成田空港に便利な地域だから、住民だけではなく、企業にとっても魅力的な立地なのだ。スカイツリーやディズニーランドだって近い。業績を回復した京成電鉄の協力にも期待したい。本来、千葉ニュータウンは宝の山で、ビジネスチャンスに満ちている。それは1966年に描いた夢と変わらない。やり方を間違っただけだ。
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