ケータイメールは死ぬのか:神尾寿の時事日想(3/3 ページ)
かつて「メアド教えて」と言われたら、教えるのはiモードに代表されるケータイメールだった。しかし今や携帯電話メッセージの主役はLINEに取って代わられている。2013年の1月、ある象徴的な出来事があったのだ。
こうして見ると、キャリアメールの衰退は、「LINEの出来が良かった」という理由だけでなく、キャリア自身が招いた自業自得な面も多々あると言えるだろう。
ケータイ(フィーチャーフォン)時代が終わりスマートフォンへの移行が不可避であったにもかかわらず、ケータイ時代にフィーチャーフォン向けに作られたキャリアメールの設計思想や搭載機能に固執して、UIやサービスのデザインを抜本的に変えなかった。さらにMNP競争でキャリア乗り換えユーザーを大きく優遇する一方で、キャリア乗り換えをするとメールアドレスが変わってしまうというユーザーの不便を放置した。それどころか、メールアドレスが変わることをキャリア変更させないための囲い込みの手段としようとした。これらがすべて裏目に出てしまい、ユーザーの利便性とスマートフォン上での使いやすさで台頭する「LINE」に、一気にパーソナルコミュニケーションの需要を奪われたと言える。
かくてキャリアメールは王座を追われ、そこにはLINEが座ることになった。筆者はLINEがスマートフォン時代の標準的なコミュニケーションサービスとして、少なくとも10年弱は支配的な地位を占めるのではと予想している。
キャリアメールは死にゆくのか
キャリアメールはこのまま死にゆくのか。
生き残りの道はある。それはLINEに対抗せず、TwitterやFacebookなどSNSと距離を置きながら、「スマート時代の新たなメールサービス」を目指すという道だ。そのためにはキャリアの回線契約による縛りを取り払い、MNPでキャリア乗り換えをしようとも、メールサービスはそのまま使えるようにならなければならない。また、あらゆるスマートフォン/タブレット/PCで使えるのは大前提であり、すべての端末で最良のユーザー体験ができるように、UIとサービス設計の両面で最適化と作り込みが必要だろう。
この「新たなメールサービスとしての進化していく」という道には、Googleの「Gmail」やAppleの「iCloud」といった強力なライバルが存在するのも確かだ。しかし、ケータイ時代のキャリアメールに馴染んでいた日本のコンシューマーユーザーの多くは、リアルタイム性が高くパーソナルなメッセンジャー用途をLINEに移行させている段階であり、メールサービス用途の需要すべてをGmailやiCloudメールに奪われているわけではない。ここに日本のキャリアメールの活路がある。
米国で人気の高いメールアプリ「MailBox」。フリックだけでメールの振り分けやリマインド設定が可能であり、とても洗練されたメール体験を実現している。キャリアメールが復権するには、このような"スマートデバイス時代に向けたメールの進化"に真剣に向き合い、新たな提案をしなければダメだろう
GmailやiCloudメールのようにキャリアの縛りなく利用でき、米国で人気のメールアプリ「MailBox」(参照リンク)のようにスマート時代に最適化された新たなメール体験を実現できれば、キャリアメールが生き残る可能性はある。
少し厳しい言い方をしよう。もし、キャリアメールがこのままメールサービスとして進化できず、ケータイ時代を引きずったまま小手先の改良しかしていけないとしたら、向こう数年でその利用はつるべを落とすかのように激減するだろう。回線契約とのひも付けならば、キャリアメールのアドレス発行数そのものは減らないかもしれない。しかし、使われない。それはコミュニケーションサービスにとって、「死ぬ」ことと同義だ。
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