消費税アップでどうなる? 鉄道運賃「1円刻み制度」を試算した:杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)
5月に入って「鉄道会社が運賃の1円刻み制度を検討、ただしIC乗車券に限り」と報道され、5月8日のJR東日本社長が定例会見で前向きに検討していると表明した。2014年4月の消費税改訂で、増税分を適切に転嫁するためだという。運賃はどう変わるのか、試算してみた。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
本コラムでは3月1日に「鉄道運賃改訂は2014年4月」と予測した(関連記事)。鉄道各社は消費税創設時と、3%から5%に引き上げた時に運賃を改定し、消費税分を上乗せしているからだ。これは企業として正当性のある行為だから、国土交通省も上限運賃の改定に応じている。次の消費税増税も同様だろう。2014年4月に消費税は5%から8%へ、2015年には8%から10%と2段階で引き上げられる。
ゴールデンウィーク中の「鉄道運賃の1円刻み制度を検討」という報道と、JR東日本の定例社長会見によって、消費税改定に伴う運賃改訂の実施が明らかになった。また「IC乗車券のみ1円刻みの運賃を適用する」というアイデアは斬新だが納得だ。もともとIC乗車券はさまざまな運賃制度に対応できるシステムだ。技術的にできるサービスのうちひとつを、経営判断で実施するわけだ。検討中という状況のようだが、システムの改修に時間がかかるため、2014年春に間に合わせるなら決断の時期は迫っている。
ところで、いくつかの報道の中に「IC乗車券と紙のきっぷの二重運賃になる」とか「紙のきっぷだと高くなる」という指摘があった。前者については、いまさら何を言うのか。鉄道運賃にはさまざまな割引制度があって、既にある定期運賃や回数券を使っても普通運賃とは異なる。「二重運賃はズルい」と言いたいのか。いまや飛行機だって隣の席の人とは違う値段で乗る人のほうが多いし、缶ジュースだってスーパーの店内と店舗の外にある自販機の値段は違うというのに。「同じ区間でもIC乗車券ときっぷでは違う値段になる」と言いたいならそう書けばいい。
しかも、すでにIC乗車券ときっぷで運賃が異なる区間は存在する。例えばJR東日本―東京メトロ―JR東日本と乗り継ぐ場合、事前にきっぷを買ったほうが安い。これは、きっぷが「全区間前払いで運賃通算制度を適用する」に対して、IC乗車券は「初乗り運賃を引いたあとは下車駅で精算」となり、JRの初乗り運賃が2回適用されるためだ(参照リンク)。
それはさておき、1円刻みの運賃制度でどう変わるのか、JR東日本の旅客営業規則を元に、新運賃を試算してみよう。ただしその前に、きっぷの値段はどのように決められるかを知っておく必要がある。
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