トラックドライバーが不足しているのに、鉄道貨物が盛り上がらない理由:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
鉄道は貨物を大量に効率よく輸送できる。同じ量をトラックで運ぶより、人手も少なく、環境に優しく、エネルギー効率も良い。しかし、鉄道貨物の輸送転換はなかなか進まない。その理由は……。
ドライバー不足が深刻なトラック業界
報告書によると、少子高齢化の流れの中で2015年度までに14万人のトラックドライバーが不足するという。運ぶモノがあって、トラックがあっても、それを運転する人がいない。
全日本トラック協会によると、「2015年までの経済成長率、営業トラックの輸送量、他産業との賃金格差などの指標に基づいて、トラックドライバーの需給予測を行ったところ、労働力確保への努力が何らなされなかった場合、2015年度では最大14.1万人が不足」という。その理由は、定年などによって団塊世代の雇用ドライバーが減ること、老齢によって自営ドライバーが減ることだろうか。
また、若者からのトラックドライバーの成り手が少ないとも言える。トラック協会はこの理由を、過酷な労働や賃金や拘束時間の長さなどで、(実態より)イメージが悪いからと考えているようだ。私は運転免許制度の変更も一因があると思う。かつては普通免許で4トン積みトラックも運転できた。しかし2007年から中型免許免許制度が始まった。それまでは普通免許があれば4トン車からトラックドライバー生活が始まり、仕事が気に入れば、そこから大型トラック免許へとステップアップできた。しかしいまは4トン車に乗るために中型免許が必要で、ハードルが高い。
現在のトラックドライバーの平均年齢は44歳前後で、平均勤続年数が12年と短い。これは高齢の転職者が多いからか、若者の定着率が低いか、その両方だろうか。荷主からの需要が変化せず、トラックドライバーが減った場合、個々のドライバーの負担は大きくなる。休日が減り、休息を取りにくくなり、結果として事故が増える可能性が高まる。
ドライバー不足が顕著な分野は長距離ドライバーとのことで、トラック協会ではドライバー確保のために、事業者向けにイメージアップの提案をしている。こうしたトラック側の努力もある一方、「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会」は、長距離トラック輸送を鉄道貨物輸送にシフトしてはどうか、と提案している。
鉄道には強固な安全システムがあり、渋滞に遭わないから定時性も確保できる。長大な貨物列車も、たったひとりの運転士で輸送できるから必要人員も少ない。ただし、鉄道の場合は運転士以外の要員も必要だし、距離に応じて運転士は交代していく。それでも、トラック輸送に比べると人員は少ないし、職掌、職域によって分業するから、ひとりひとりの負担は比較的小さい。
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