「障がい者主体」ではなく「お客さま主体」――スワンベーカリー・海津歩社長:社長インタビュー(3/3 ページ)
ダイバーシティが求められる今、企業にとって大きな課題といえるのが障がい者の雇用だ。東京・銀座など全国に28店舗のベーカリーやカフェを展開するスワンでは、社員の約半数に何らかの障がいがあるというが、社員は皆いきいきと働いている。その理由は何か? 海津社長に話を聞いた。
企業のCSRとは「社員を仕事に夢中にさせること」
編集部 海津社長のこのような姿勢・お取り組みが、従業員がイキイキと働けている理由なのでしょうね。
海津 私は、企業のCSRとは社員を仕事に夢中にさせることだと思っているんです。障がい者の会社を作ったり、雇ったりするのは簡単なんですよ。障がい者が働くことによりいかに充実感、達成感を感じて彼らの人生が変わっていくか、それが大切なんです。仕事というものは人を幸せにするためにあると思います。うちの社員に、「仕事をしていてどんなときが楽しい?」と聞いたら、「お客さまに喜んでもらえたとき」という答えがみんなから返ってきました。人はありがとう、と感謝されることを生きがいにできるんじゃないかと思いますね。
編集部 今後の展望をお聞かせください。
海津 企業の一方的な押し売りではなく、そしてWin-Winだけではない、“世のため、人のためとなるビジネス”を展開していきたいですね。食物アレルギーの方でも召しあがれるケーキや介護食に向いているパンの製造・販売、離島や過疎地へお住まいの方へ健康・グルメ志向の冷凍パンの宅配等をすでに行っていますが、このようなことをさらに展開していきたいです。被災地支援や、地域復興につながるプロジェクトも計画中です。
編集部 冒頭でもおっしゃっていた、海津社長の理念に基づいた展開を今後も続けていかれるのですね。
海津 そうですね。ただ、「海津よりもっとうまくやってやるぞ」、そんな若者がどんどん出てきてくれればうれしい。そして、障がい者が働いていることが当たり前になっている、そんな世の中になったらいいですよね。
海津 歩(かいつ あゆむ)
1960年生まれ。アルバイトからヤマト運輸株式会社に入社。赤字営業所の黒字化、時間帯お届けサービスなど様々な業務改革に取り組み、各地の営業所長、支店長を歴任。2005年、ヤマト運輸創業者である故・小倉昌男氏の遺志を継ぐ形で株式会社スワンの社長に就任。様々な企業・プロジェクトとの共同開発、事業展開を行うほか、全国で講演なども行っている。
本記事は、『月刊総務』2013年5月号「企業トップインタビュー」より転載しました。
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