就活ナビサイトは「新卒一括採用のひずみを生み出す元凶」なのか:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)
リクナビやマイナビといった「就活ナビサイト」が、新卒一括採用の仕組みを推進し、大きな利益を上げている、と批判する人がいます。今回は就活ナビサイトの実態を、少しだけのぞいてみましょう。
リクナビがどんなサービスを提供しているのかは、サイトに掲載されています(参照リンク)。参画企業数や学生の利用率なども一目瞭然ですし、標準料金がいくらで、それでどんなサービスが受けられるのかも明示されています。マイナビについても「マイナビ2014 掲載料金」で掲載してみるといいでしょう。マイナビ自体が公表しているサイトは見つかりませんが、マイナビの代理店が自社の取り扱い商品として、マイナビのプランと費用をいろいろ公開しています。その中には「エントリーさせたらいくらチャージ」という仕組みや商品は見当たりません。
もちろん、企業は費用対効果を考えますから、採用担当者たちは「このくらい払うと、どのくらい学生から応募がくるの?」と質問するでしょう。就活ナビサイトの営業担当者が「実績としてはこのくらいありますよ!」とプレゼンテーションするのは、ビジネスの現場では日常茶飯事なはず。そして、その成果が出なければ「話が違うよー」となることもあるかもしれません。場合によっては補填を求められるケースも考えられます。ですが、それは「エントリーさせたらいくらお金がもらえる」というのとは違いますし、だから就活生に無理矢理エントリーさせるという話とも違います。
就活ナビサイトを知らないために起きる勘違い
これらのサイトは通常は企業向けで、エンドユーザー(就活生など)に対して積極的に公表されているわけではありません。ですから、実際に利用している就活生たちが知らなくても当然といえば当然です。しかし、新卒一括採用とそれに関連した就活ナビサイトを大きな声で批判している人の中には、もう立派な社会人もたくさんいます。ネットで検索するだけで、少し調べれば分かることなのに、都市伝説(のようなもの)を鵜呑みにして、勘違いしていることを根拠に話をするのはどうなのかと私自身は思っています。
さて、せっかく調べたのですから、もう少し「新卒一括採用のひずみを生み出す元凶」と言われてしまっている就活ナビサイトについて、その周辺のサービスも含めて探ってみましょう。まず、ナビサイトの商品構成を見ると、サイトに掲載する料金と、就活生とコミュニケーションを取るための仕組みに対して料金が設定されていることが分かります。そう、単純な広告というわけではなく、その延長線上に「就活生とやり取りをして、そのデータも含めて管理する」採用担当者向けのツールとしても、就活ナビサイトは機能しているのです。裏を返せば、就活生にとっても、採用担当者たちと連絡を取り合うツールとして、就活ナビサイトは活用されているということです。「就活という仕組みや、就活のルールを就活ナビサイトが作っている」と言われるゆえんは、実はこの辺りのツール設計の上手さに起因しているのかもしれません。
採用担当者の経験がある人なら分かるでしょうが、採用フローの中でもっとも手間がかかるのが「事務的な作業」です。本当に大切なのは、人材用件定義だったりアセスメントだったりするのですが、それ以前に大量の応募者の情報を管理するだけでも一苦労。手書きのエントリーシート全盛の時代には、到着した封書を開封し、方向をそろえて整理するだけでも一日仕事だった……という話をよく聞きました。そのあたりの「効率化」のために、ナビサイトが単なる就活生向けの求人広告サイトから、採用ツールへの進化を遂げたというのは、ある種の必然だったのかもしれません。もちろん、「新卒一括採用を行わなければ、そういう手間は発生しない」という話は理解できますが、今回はそこには触れません(いずれ書くことにします)。
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