コラム
「誤報だ! 誤報だ!」と叫ぶ、彼らの行動は“稚拙”:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
従軍慰安婦問題を巡って、橋下徹大阪市長の発言が国際的に波紋を広げた。市長は頻繁に「誤報」を口にしたが、この言葉を都合良く使い過ぎていないだろうか。
急いでリダイヤルすると、もう一度「誤報だ!」と絶叫する声が耳に飛び込んできた。なにが誤報なのか聞き返すと、もう一度同じ言葉を叫ばれ、電話は一方的に断ち切られた。首を傾げていると、すぐに同社の広報担当者から電話が入った。なぜ同幹部が激怒しているのか質すと、意外な答えが返ってきた。
広報担当者曰く、「記事では、新しい販売チャネルの“銀行”ばかりが強調され、既存販売網の証券会社が軽んじられている印象があった。今まで付き合いのあった証券会社を怒らせる公算がある」とのこと。実際に日本の証券会社からクレームが入ったかと聞き返すと、抗議はなかったとのこと。
広報担当者は恐る恐る記事の差し替えを求めてきたが、私は要求を突っぱねた。巨大な外資が国内銀行に販路を広げること自体がニュース。同社が証券会社から商品を引き揚げるような印象を抱かせるような記述はしていない上に、投信の銀行窓版というキーワードも記事の中に植え付けた。抗議されるいわれは一切なく、まして誤報呼ばわりされる覚えもない。また、記事の編集権は自分にあると強調した。金融商品を紹介する広告ではないし、タイアップの対談企画でもない。あくまでもストレートニュースだと説明し、広報担当者を納得させた。
電話のあと、私自身の怒りがなかなか収まらなかったことを記憶している。商売相手の顔色を気にするあまり、まともな記事を誤報だと言われたことがとてつもなく腹立たしかった。
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