大臣の発言は都合が良すぎないか――マーケットを利用したツケ:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
日本株式市場の値動きが荒くなっている。新聞やテレビニュースの見出しには「乱高下」の文字が躍り、大臣からは「?」な発言が飛び出した。アベノミクス効果による“上昇相場”は、そろそろ息切れしてきたのではないだろうか。
一般的なネット取引を行う個人投資家が、個別銘柄の小刻みな売買の板(売り買い注文の様子)をにらんでいるうちに、HFTを使う大口投資家は数十から数百の銘柄の取引をあっという間に実行してしまうのだ。一度の取引で小さな値幅だろうが、これが数百銘柄単位になれば、得られる利益も膨らむという理屈だ。
株式市場では、こうしたシステム売買を駆使する海外投資家が日本市場の半分近くのシェアを占めているだけに、麻生大臣が指摘したように商いが上げ、あるいは下げの一方向に、極端な形で傾きやすくなっているわけだ。
投機筋の売り買いがかさめば、年金などを運用する機関投資家が追随の買いを入れる、あるいは損切りの売りを出すだけに、市況のブレはさらに拡大し、いわゆる乱高下という状態になるわけだ。
先の麻生発言に戻る。
大臣が指摘した用語解説に間違いはない。だが、別の観点から言わせてもらうと、そもそも話が違うのではないかと、私など嫌味な人間は受け止めてしまう。
そもそも黒田バズーカという予想外の政策を打ち上げ、市場の上げ潮基調を意図的に作ったのは誰なのか、という点を大臣はお忘れになっていると思うのだ。
日銀の異次元緩和発表から、直近のピークまで日経平均株価は約4000円上昇した。当欄でも指摘したが、実体経済はなにも変わらず、かつ異次元緩和の効果も未知数な中で、「政府・日銀は、ムード先行で上げ基調を過度に演出した」(日系証券エコノミー)。この過程では、買いが買いを呼び込むことになった。もちろん、HFTが絶大な効力をみせたのは明白。市況が上げているとき、政府要人は「アベノミクス効果」を全面に打ち出した。一方、昨今の下げ局面では高速取引システムを悪者にするのはいかがなものか。つまり、都合良すぎだろ、と映るわけだ。
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