政府の「原発再稼働ありき」が透けてきた――こんなときこそ読むべき1冊:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
自民党がきたる参議院選挙の公約を発表した。その中で「原発の再稼働推進」を打ち上げたわけだが、そもそもなぜ日本に原発があるのだろうか。こうした疑問に分かりやすく解説している1冊を紹介しよう。
当欄では、過去に何度かマスコミによる“言葉狩り”や“言葉のつまみ食い”を批判してきたが(関連記事)、今回の騒動に関してはマスコミに非はない。もちろん、私自身が抱いた個人的な怒りの感情を含んだ上でのことだが、「言って良いことと悪いことくらい考えろよ」と思った次第。
また、こうも考えた。福島が現在どういう状況に置かれているか、避難生活者がどのような苦境に立たされているか、与党幹部が皮膚感覚で理解していないため、“他人事”とも受け止められる発言につながったのではないかと。後に高市氏は発言を撤回した上で、謝罪した。だが、多くの国民に不信感を植え付けたのは間違いない。
先週は自民党がきたる参議院選挙の公約を発表した。この中には、「安全と判断された原発の再稼働については、地元の理解が得られるよう最大限努力する」との文言が盛り込まれた。事実上、再稼働推進を打ち上げたわけだ。
先の発言と併せてみると、「再稼働ありき」で物事が進んでいたようにみえる。
現場無視の偉い人たちには、ぜひこの本を
こうしたタイミングの中、私の手元に1冊の新刊が届いた。タイトルは『ヒロシマからフクシマへ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社)。著者は本欄で何度も取り上げた烏賀陽弘道氏だ。烏賀陽氏は朝日新聞記者、アエラ記者を経てフリーになったジャーナリストで、『原発難民』(PHP新書)、『福島 飯舘村の四季』(双葉社)など、福島第一原発事故後の福島の事象をさまざまな角度から追ってきた人物だ(関連記事)。
新刊の『ヒロシマから〜〜』は、そもそもなぜ日本に原発があるのか、という烏賀陽氏の素朴な疑問が出発点となっている。
原爆被害に遭った日本で、なぜもう一度核の悲劇が起こったのか。烏賀陽氏は渡米したうえで、同国のさまざまな核関連施設を取材した。どのような歴史的背景から原爆がつくられ、それがどのような形で原発を生み出したのか。また、どのような経緯で戦後、日本に原発がつくられることになったかを絵解きで、分かりやすく解説してくれる。
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