これからの「ニッポンのスーパーマーケット」に必要なものとは?:カイモノマーケティング(1/3 ページ)
2013年春に開催された「みんなのスーパーマーケット ー47都道府県のご当地スーパー展ー」。雑貨コレクターの森井ユカさんによるキュレーションで独自色のあるスーパーマーケットが集まりました。
著者プロフィール:畠山敦子
株式会社マックス、経営企画室。日本大学大学院理工学研究科土木工学専攻卒。IT、キャリアコンサルタントを経て、主にアコースティックを得意とした作詞作曲ができるボーカリストとして人生寄り道、その後、クチコミマーケター、地方協働やブランディング、映画や旅、恋愛モノといった雑食系フリーライターを経て、2011年より現職。
2013年春に東京・渋谷にある渋谷ヒカリエで開催された「みんなのスーパーマーケット ー47都道府県のご当地スーパー展ー」。キュレーターの森井ユカさんが日本全国140件のスーパーマーケットを巡って、「その土地らしさ」あふれる商品を集めた展示会でした。
立体造形家であり雑貨コレクターでもある森井さんのセンサーは、地元の人に昔から親しまれているもの、よそゆきではないものに強く反応するといいます。今回のイベントでも、
- その県で生まれたスーパーへ行き
- その県の会社が販売しているものの中から
- 親しみを感じる、愛らしい佇まい商品を選ぶ
という3つのルールでコレクションしたアイテムを並べたのです。その中からいくつかをピックアップして紹介したいと思います。
行事が熱い! いも煮会争奪戦
地元密着ゆえに、ご当地スーパーマーケットで欠かせないものが季節行事やお祭り行事。例えば山形県の場合、いも煮の時期になると多くのスーパーが必要な具材をすべてそろえた「いも煮会セット」を全力でアピールします。
スタンダードな里芋、豚肉、茸、ネギ、こんにゃく、ごぼう、調味料という食材はもちろんのこと、大きな鍋の貸出も当然標準装備。差別化をはかるために、ゴザ、網、鉄板の貸し出しや、ポリタンク1個分の水もサービスでつけてしまうなど、いたれりつくせり。さらには「いも煮会が終わったあとのゴミの引き取りサービス」まで行っているところもあるそうです。
ご当地スーパーだからこそ、地域の行事を取り入れることは大事です。ほかにも愛知県の「一期家一笑」が定休日に厨房を使って開催する料理教室や、福岡県の「ショッピングセンターにいの」にある1日2時間だけ営業する食堂など、地域の人とのコミュニケーションの場になるようなサービスがいろいろ展開されています。
BGMや店内放送の意外性にみるローカルスーパー
店内のBGMは消費者の購買行動に、とても有効な手段のひとつです。スローテンポの曲を流すとアップテンポのBGMを流したときより店舗内での移動スピードが遅くなるため、一般的に売り上げがアップする傾向があるといわれています。ただし、ゆっくり過ぎるのも活気が失われてしまい、気軽な買い物にほど遠くなってしまうのでNG。
心地よい売り場づくりのためには、耳障りのない、聞いていて心地よいほど良いテンポの音楽が一般的です。BGMには心理的な影響力もあり、購買層にマッチしたものをセレクトするのがベストといわれていて、J-POPのインストルメンタル(ボーカルなしの器楽曲)や流行の歌謡曲は多くの店舗で耳にすることができます。
ところが、「フードオアシスオータニ」宇都宮東店のBGMはジャズ! 店の内装は黒の基調でアコースティックなデザインで、BGMと合わせて特別感が演出されています。森井さんが取材したスーパーマーケットの中ではBGMがジャズだったのはここだけだったそうで、「何となく特別なスーパーにきている」とうれしい気持ちになったといいます。店内の雰囲気とBGMがマッチしたことでより深く印象に残ったようですね。
また、秋田県のタカヤナギ・グランマートを森井さんが訪れたときに、広く整然とした店内で流れていたのは「鉄腕アトム」のテーマ。活気のある音楽によってますますカイモノの気分が上がったタイミングで、店内放送から流れてきたのは試食販売ならぬ「振る舞い」のご案内。にぎやかな勢いのある音楽とともに流れてきた「振る舞い」という丁寧なこの言葉のギャップがとても新鮮、かつ品よく感じられて心に深く残ったそうです。
振る舞いの中でも「振る舞い鍋」では季節に合わせた旬の具材をたっぷりと使ってお客さんをもてなします。試食販売なのに振る舞いと呼ぶその姿勢、山の芋鍋、トン汁鍋などバラエティに富んでいて、大変好評でお店の恒例になっています。
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