国のチカラが弱くなっている中で、「国籍」に何の意味があるのか:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(7)(4/4 ページ)
日本を離れて海外に住む人が増えつつある。米国在住経験を持つ小飼弾さんと松井博さんに、国籍や海外移住の持つ意味について語ってもらった。
米国では白人ばかりの街が増えている
松井:今、米国では白人ばかりの街が増えています。沿岸部に外国人が増えて、彼らはみんな仕事ができたりするので、白人は内陸部に引っ越したりするんですよ。そこはゲートで囲まれているので、“有色人種立ち入り禁止”といった雰囲気が漂っているんですよ。で、アップルで働いていた白人が会社を辞めると、そういう街に引っ越す。
世界中からスゴい人を集めてこないと、いまの厳しい競争には勝てません。そうすると「自分は大学で、ナンバーワンのプログラマーだった」という人が、インドから来た人に抜かれたりする。そういう人は「つまんねえなあ」と言って白人だけの街に引っ越す。でも、そんなことをしても現実から逃がれることは難しい。
小飼:こういってはなんですが、力がある人、特に金持ちにとって、国はウザいけど便利な存在なんです。国境のおかげで「いいよ、オレは隣の国に行くだけだから」と言える。一方、力のない人にとっては、国というのは最後の拠り所ですからね。
松井:確かに。でも国が弱くなってきている。
小飼:国にとって最も役に立たなさそうな人が国にすがってきて、国に一番役に立ちそうな人がどっかに行ってしまう。「いいよもう、お前のところ税金高いからイヤだよ」と言って。
松井:そうそう。本当にそうですよ。
(終わり)
プロフィール:
小飼弾(こがい・だん)
東京都出身。1991年12月米カリフォルニア州立大学バークレー校中退。その後帰国し、ネットワーク技術者として活躍。1996年ディーエイエヌを設立し、代表取締役に就任(現任)。1999年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の取締役に就任するも、2001年に同社取締役退任。著書に『小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)、『空気を読むな、本を読め。小飼弾の頭が強くなる読書法』(イースト・プレス)ほか。Twitterアカウントは「@dankogai」。
松井博(まつい・ひろし)
神奈川県出身。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。ブログ『まつひろのガレージライフ』が好評を博し、著書『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』(アスキー新書)を出版。Twitterアカウントは「@Matsuhiro」
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