「プリズム」は他人事ではない――あなたもしっかり監視されている:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
スノーデン氏が個人情報収集活動を暴露したことで、騒動は拡大の一途をたどっている。米国が日本大使館の通信を傍受していたとも伝えられる中、我々の個人情報はどうなっているのか。
あなたも監視されている
“気になる声”に触れる前、少しだけ脱線することをお許しいただきたい。今年2月、私は『血の轍』(幻冬舎)を上梓した。警察組織の暗部を抉る作品なのだが、物語の冒頭にこんなエピソードを記した。
都内で通り魔事件が発生し、警視庁の精鋭捜査員があっという間に犯人を検挙する……という内容だ。具体的には、捜査員が事件現場付近の防犯カメラ映像を短時間のうちに収集し、逃走した被疑者の足取りを捕捉する、というもの。
刊行から数日後、日ごろから創作活動を支援してくれる現役捜査員から連絡をもらった。「冒頭の逮捕劇は面白かったけど、リアリティーに乏しい」という主旨だった。どこが現実と違うのか聞き返したところ、こんな答えをもらった。
「警視庁には『捜査支援分析センター』という部署がある」とのこと。さらに尋ねると、概要を教えてもらった。要するに、この部署が登場しないと物語の説得力が減じてしまう、ということだった。
ネタ元によれば、支援センターには、街頭にある防犯カメラの映像などを解析する「情報支援」と、犯罪手口のデータを元にプロファイリングする「捜査支援」が二本柱として存在するという。
「捜査支援分析センター」で検索をかければ、誰でも情報に接することができるので、組織図やらの詳細は割愛するが、「情報支援」の部署が私の中で、「?」として引っかかったのだ。
別の捜査員に聞いてみると、「専門職員が日夜繁華街や住宅街に出かけて防犯カメラの数や位置を精査している」というのだ。
ここ2〜3年、都心の繁華街や都内の主立ったターミナル駅周辺で起きた強盗や殺人事件での検挙率が比較的高いのは、支援センターの役割が非常に大きいと複数の捜査員が明かしてくれた。
つまり、どこで事件が発生したかの情報をつかめば、支援センターが即座に現場一帯の防犯カメラの位置情報を捜査員に伝える。その後、ただちに防犯カメラの映像を分析することで、犯人の足取りが早期につかめる、という具合だ。
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