開通から70年……山陽本線関門トンネルの“寿命”が近づいている:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
本州と九州を結ぶトンネルは4つあるが、その中で最も古いのが山陽本線の関門トンネルだ。戦時中の開通から70年。着工から77年。修繕にも限界をきたし、新たなルートが必要となっている。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
地元の人々にはアタリマエのことだが、関門海峡は歩いて渡れる。いや、くぐり抜けられる、と言ったほうが正しい。国道の関門トンネルは2階建て構造で、車道の下に幅4メートルの歩道がある。海底トンネルだから景色は見えず、黙々と歩くだけ。海底だから静か、というわけでもなく、国道を走り抜けるクルマやトラックの音が耳につく。
しかし、天井のさらに向こうで壇ノ浦の戦いがあったと思うと愉快である。距離は780メートルで、両端からはエレベーターで行き来する。24時間年中無休、日焼けしない全天候型のランニング施設に見立てる人もいるようで、私が歩いた時も数人のランナーとすれ違い、追い越された。
この国道トンネルの開通は1958年だ。すでに55年が経過している。着工からは74年。壁の化粧板も隅がひずんでいるし「壁を叩かないでください」なんて貼り紙もある。かなり傷んでいる様子だ。実際、このトンネルは10年ごとに修繕工事が実施され、その間は2カ月から3カ月間も通行止めになる。迂回路として関門橋があるからこそできる処置だ。
この関門国道トンネルよりもっと古く、老朽化が問題となっているトンネルがある。山陽本線の関門鉄道トンネルだ。戦時中の1942年に開通し、今年で71年目を迎える。着工からは77年。人間で言えば喜寿でめでたいけれど、海底トンネルの老いは深刻だ。
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