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フランスの列車事故は他人事でない――日本にも警鐘を鳴らしている杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)

フランスで大きな列車事故が起きた。7両編成の特急列車が駅を通過しようとしたところ脱線し、少なくとも7人が死亡。重傷者多数。原因は線路にあるという。その背景に鉄道経営のトレンド「上下分離」がありそうだ。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 7月に入り、交通機関の事故が頻発している。サンフランシスコ空港でアシアナ航空機が墜落。ヒースロー空港では火災事故の究明と対策が終わって復帰したばかりのボーイング787型機が再び火災。カナダでは無人運転状態の原油輸送列車が街中で脱線爆発し、住民の死者20人以上、行方不明者40人以上。日本でもJR北海道で列車火災事故が頻発している。そして今回、本記事で考察する「フランス国鉄列車脱線事故」が起きた。

 私は常々「事故報道は原因が記されていなければ意味がない」と思っている。航空機や船舶、鉄道など、大量輸送の公共交通機関の事故はそれだけでニュースの価値がある。報じられて、利用者である市民の声が高まればこそ、原因究明を急ぐ「見えない圧力」になるだろう。しかし、結果として原因が報じられなければ、市民にも同業者にも参考にならず、同様の事故をなくす教訓にならない。

 一般家屋の火災や自動車事故にいたっては、発生だけ伝えて終わる記事ばかりで、原因追及の続報がない例がほとんどだ。そればかりか、被害者や加害者の個人情報を掘り下げて、読者の哀れみや怒りを誘ったりする。しかし、事故報道で最も大切な要素は原因であり、原因に言及しない記事は野次馬にすぎない。

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