なぜJR北海道でトラブルが続くのか:杉山淳一の時事日想(7/7 ページ)
JR北海道で車両火災などトラブルが頻発している。車両の新旧や該当箇所もまちまち。共通の原因を見つけ出すとするなら、それは車両ではなく運用だ。JR北海道は昨年、整備体制の不備を会計監査院に指摘され、国土交通省から業務改善命令も受けていた。
JR東海、JR四国の成功例も学べ
会計検査院が2011年度にJR北海道のずさんな整備状況を指摘した時、JR四国についても同様の調査結果を発表していた。延べ987両について、検査項目や検査記録に不備があった。JR四国は4カ所の検査施設で異なる記録用紙を使い、それぞれの項目に不備があった。また、検査を担当する子会社に対する指導、監督が不十分だったと指摘している。JR四国はさっそく改善に取り組み、指摘から2カ月以内に記録用紙を統一し、検査品質を向上させたようだ。
また、配電盤の火災はJR東海でも起きている。2010年8月に「のぞみ155」で、過電流が発生した時にブレーカーが働かなかった。原因はハンダの不良で、JR東海は該当するブレーカー約9200個を交換している(参照リンク)。この情報は速やかに詳細が公開された。他の鉄道事業者にも参考になったはずであった。
JR北海道は2016年に新青森−新函館間で新幹線を運行する。目標時速は360キロメートルという。とても待ち遠しいけれど、現在のような車両整備状況では、怖くて乗れない。いま、JR北海道が取り組むべき問題は、マニュアルの精査改善と、マニュアルを守らない人に対する毅然とした態度だ。マニュアルが守られない人には仕事をさせない。そのくらいの強い姿勢が必要だろう。関連会社も含めて労使一体となり「安全第一」という共通意識を持って、いち早く異常事態から脱出してもらいたい。
編集部より、訂正とお詫び
当記事において、7月26日の掲載時点で「北海道では……」と記述すべきところを「JR北海道では……」と記述してしまいました。訂正して、お詫び申し上げます。なお該当箇所(3ページ目)については、既に修正しております。
関連記事
- 鉄道ファンは悩ましい存在……鉄道会社がそう感じるワケ
SL、ブルートレイン、鉄道オタク現象など、いくつかの成長期を経て鉄道趣味は安定期に入った。しかしコミックやアニメと違い、鉄道ファンは鉄道会社にとって悩ましい存在だ。その理由は……。 - 「青春18きっぷ」が存続している理由
鉄道ファンでなくても「青春18きっぷ」を利用したことがある人は多いはず。今年で30周年を迎えるこのきっぷ、なぜここまで存続したのだろうか。その理由に迫った。 - なぜ新幹線は飛行機に“勝てた”のか
鉄道の未来は厳しい。人口減で需要が減少するなか、格安航空会社が台頭してきた。かつて経験したことがない競争に対し、鉄道会社はどのような手を打つべきなのか。鉄道事情に詳しい、共同通信の大塚記者と時事日想で連載をしている杉山氏が語り合った。 - JR東日本は三陸から“名誉ある撤退”を
被災地では、いまだがれきが山積みのままだ。現在、がれきをトラックで運び出しているが、何台のトラックが必要になってくるのだろうか。効率を考えれば、鉄道の出番となるのだが……。 - あなたの街からバスが消える日
バスは鉄道と並んで、地域の重要な移動手段だ。特にバスは鉄道より低コストで柔軟に運用できるため、公共交通の最終防衛線ともいえる。しかし、そのバス事業も安泰ではないようだ。 - なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が
秩父鉄道の踏切で自転車に乗った小学生が電車と接触して亡くなった。4年前にもこの踏切で小学生が亡くなっている。なぜ事故は防げなかったのか。踏切に関する政策を転換し、「安全な踏切」を開発する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.