Xperiaの半分しか売れなかったGALAXY――ツートップの差はなぜ開いたのか?:神尾寿の時事日想(2/3 ページ)
2013年の夏モデルから販売方針を大きく転換、ソニーとサムスンを「ツートップ」として特別扱いしたNTTドコモ。結果、Xperia AはGALAXY S4の2倍売れ、iPhoneに迫る勢いだ。差が付いた理由、そして次期「一推し」を予想する。
Xperia AとGALAXY S4の価格差が生まれた理由
Xperia AとGALAXY S4で、なぜ倍以上の差が開いたのだろうか。要因は複数あるが、なかでも大きいのが価格戦略の違いだ。
ドコモは今夏のツートップ戦略においてXperia AとGALAXY S4に特別割引を設定し、“ツートップ以外”のモデルよりも割安な価格で販売したが、発売直後の価格を見ると両者で同じ価格が設定されたわけではない。Xperia Aの方がGALAXY S4よりも1万円近く安く設定されていた。
なぜ、この価格差が生まれたのか。
表面的に見れば、それは「性能と位置づけの違い」から生じたものである。ソニーのXperia Aは"普及モデル"であり、性能的に見れば今期トップクラスのものではない。最先端の部品で最高性能を求める代わりに、一般ユーザーのニーズが高いカメラと防水の機能にこだわり、万人受けをするデザインになっている。一方、サムスンのGALAXY S4は同社のフラッグシップモデルであり、CPU性能を筆頭に"最先端かつ最高性能を重視したハイエンドモデル"になっている。
そして、この位置づけの違いが、両社の価格戦略に明確に現れた。スマートフォンでは、メーカーがキャリアに製品を納入し、それをキャリアが各販売代理店に卸売りをするという販売モデルになっている。この際の"キャリアに対する納入価格"で両者の仕組みが異なったのだ。
複数の関係者によると、ソニーのXperia Aは当初の計画台数である約100万強のうち、「初回納入台数以降の追加調達分は、納入価格が段階的に下がる価格設定になっていた」(関係者)という。Xperia Aが売れて追加調達がかかるほど、ドコモ側がソニーに支払う端末代は安くなるため、今回のツートップ戦略のように「あらかじめたくさん売ることが前提」であれば、追加調達分の値下がりを加味して当初から店頭販売価格をドラスティックに下げられる。Xperia Aは最先端・高性能なデバイスではなく、歩留まりのいい部品で手堅くまとめたため、量産効果が出やすいのでソニー側にも損はない。
一方、サムスンのGALAXY S4は、グローバル市場で数千万台を販売することを前提にし、最先端かつ最高性能のデバイスを搭載していた。各国のキャリアへの納入価格も、“グローバル市場での大量生産・大量販売”を前提にした価格で設定されている。そのためドコモのツートップ戦略に際しても、ソニーのように「追加調達分から納入価格を段階的に引き下げる価格設定になっていなかった」(関係者)という。もともとハイエンドモデルで単価が高いことに加えて、調達台数が増えても納入価格が下がらない契約であったため、ドコモとしてもXperia Aのような戦略的な販売価格が設定できなかった。結果として、販売開始当初に価格差が生まれてしまったのだ。
市場の変化が、GALAXY S4ではなくXperia Aを選んだ
むろん、両者の価格差があったとしても、その差は1万円ほどである。普及モデルとハイエンドモデルの違いもあるため、ドコモ内部には「(ツートップの中で)需要が棲み分けする。GALAXY S4は特にMNP競争で、iPhoneキラーとして機能するはず」という見方もあった。
しかしフタを開けてみると、Xperia Aが予想以上の成果を上げた半面、GALAXY S4はドコモにとって期待外れの結果となってしまった。
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