「世の中の役に立ちたい」気持ちが強すぎる若手社会人が陥りやすいワナとは?:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)
「今やっている仕事が世の中の役に立っていると思えない。人の役に立つ仕事がしたい」そう熱望するあまり会社を辞めてしまう若手社会人は少なくありません。やる気があり、当事者意識を持って仕事に取り組める人材だからこそのジレンマとは……。
ある若手社会人の転職相談に乗っていたときのことです。入社直後から「何か違うと感じています」「今の職場は、自分の居場所とは思えません」「仕事は忙しいですが手応えはゼロです」と、何度も繰り返し訴えてきて、その度に「転職したいのですが、まだ早すぎますか?」とその人は聞いてきました。トータルで2年近く、私はその人から何度も相談を受けました。
それに対して私は「入社半年で退職しました、というキャリアは正直マイナス。それこそブラックと呼ばれる企業でもないし、言葉にならない違和感なら、動かないのが得策だと思う。今の職場で学べることをすべて学んだ、という状態になってから、次を探しても遅くないと思う」と、これまた同じ台詞を繰り返し、それこそ決まり文句のように何度もいって、思いとどまらせていました。しかし、彼の「転職意欲」はなかなか収まりません。
彼自身の持っている違和感の正体は、次のキーワードに集約されています。「世の中の役に立ちたい」。今の職場ではそれが実現できない、自分がやっている仕事が世の中の役に立っていると思えない、人の役に立つ仕事がどうしてもしたい……まるでうわ言のように、そう繰り返していましたから。そして、こういう若手社会人は、実はそれほど珍しくありません。
しばらくすると「起業という選択肢も視野に入れてみます」と晴れやかな顔をして報告に来てしまうケースも少なくないのが、このタイプの特徴です。「人が敷いたレールの上では、自分が考える社会貢献はままならないし、だからこそ自分で考えて行動する必要があると分かりました」と決意を報告した上で、「こんなアイデアを実行しようと思うのですが」と言い出します。
「働いたら負けだとか、自分のメリットにならないことならしない方がマシという若手社会人が多いのだから、こういう積極性は買うべきじゃないのか」という声が聞こえてきそうですが、実はこのタイプ、なかなか一筋縄ではいかないのです。私は密かに彼らのことを「本部テント型」と名付けて、注意深く見守っています。
本部のテントに詰めている主催者サイドの人たち
体育祭や文化祭などのイベントのときのことを思い出してみてください。俗に運営と呼ばれる人たちは、白いテントの中にいて、いろいろと指示を出していなかったでしょうか。暑いグラウンドに立っている自分と、テントの日陰の中から悠々と見ている人たち(直射日光が当たらないだけで、涼しいわけではないですが)を比較して「ああ、いいなー」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか。
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