なぜ就活生はバイト経験をアピールし、人事はそれを無視するのか:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
あなたは就職活動のとき、自分が学生時代にどんなアルバイトをしていたか懸命にアピールしませんでしたか? しかしある単純な理由により、企業は採用時にそれを重視しません。就活生と企業の間のギャップが10年たっても埋まらない訳とは……。
人事がアルバイト経験を無視し続ける単純な理由
かつてある就活生向けの情報誌を読んでいたとき、「アルバイト経験をアピールする学生をどう思いますか?」という学生からの質問に対して、有名企業の人事が「アルバイト経験は仕事にはまったく役に立ちません。そんな経験は捨ててもらっていいし、バイト感覚で仕事に就かれては迷惑だ」と話している記事を見たことがあります。それを読んで「この人、大丈夫なのかな」と、他人ごとながら私は心配してしまいました。なぜなら、それが就活生と人事の「アルバイト経験」における意識のギャップの正体だからです。
企業の採用基準における重視項目をもう一度見てみましょう。最も多いのが「人柄」、次いで「自社への熱意」「今後の可能性」と続きます。就活生が1位と3位の項目に関して直接的に話をして、アピールするのはとても難しいことはお分かりでしょう。就活生に限らず、社会人でも、そうそう自分の人柄やポテンシャルを上手にPRできる人は少ないでしょう。そして、企業もそのことをよく知っています。だからこそ、就活生が話す「アルバイト経験」や「所属クラブ・サークル」の話に耳を傾け、その中から「人柄」や「今後の可能性」を見極めようとしているのです。
「だったら、このデータにギャップはないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。しかしここには、見逃しがちな大きな落とし穴が存在します。
就活生が「人柄」をアピールするために「アルバイト経験」について話をしたと自覚していれば、アピールした項目はアルバイト経験ではなく、人柄ということになります。しかし、アルバイト経験を通して人柄や可能性をアピールしているという自覚がない場合、アルバイト経験が評価されると思い、それをアピールするということになってしまいます。アルバイト経験の経験を評価して欲しいと話をされるのと、アルバイト経験を通して人柄やポテンシャルを測って欲しいと話すのは、似て非なるものであることは、ベテランビジネスパーソンなら自明の理ですよね。
ささやかな話のような気がしますが、就活生が混乱に陥ってしまう原因というのは、その程度のことがキッカケでもあるのです。しかし何年経っても、そのギャップは解消されていない。その責任はどこにあるのか、少し考える必要がある時期に来ているのだろうと、連休中で普段よりアクセスが少ないタイミングなのに乗じて、コッソリと書いてみるのです。
関連記事
- サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:バイトテロと「自分らしく生きる」ことの近くも遠くもない関係
バイト先でいたずらを撮影、Twitterで炎上するバイトテロ。「相手の立場に立って考えろ」と大人は思いますが、「考えても分からない」若者が一定数存在するのでは? とサカタさんは指摘します。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:結果には原因がある――若手社会人が「こんなはずじゃなかった」と早期離職する原因
さまざまな情報があふれている現代、それは就職活動でも同じです。就活中に企業や業界について調べたはずなのに、「そんなはずじゃなかった」と入社して数年で会社を辞める若手が減らない原因とは? - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「こじらせている就活生」に対して、社会人がやってはいけないこと
大学生から就職についての相談を受ける人が増える時期です。最近はいろいろな人に話を聞き、セカンドオピニオンを求めるという学生も増えているのですが、「アドバイスを受けた結果、余計混乱する」という事態が起きているといいます。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「就活地獄」報道は本当か――就職氷河期と企業の採用満足度の関係性
就活が厳しすぎて学生が疲弊している、就活に失敗して自殺者も……といった報道をよく見かけます。しかし本当に、最近の就職活動は大変なのでしょうか? 直近16年分のデータを、企業側、学生側の両方から見てみましょう。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:原宿のカフェとカレーとルーズリーフに書かれた履歴書の話
カフェでカレーを食べていたら、隣の席で面接が始まったというサカタさん。若い女性の前に置かれていたのは履歴書代わりのルーズリーフ(!)。果たしてこの面接の内容は……? お盆更新ということで、普段以上にゆる〜くお届けします。 - ハローワークで“やりたいこと”を探してみたけどなかった、という話
居酒屋で隣り合わせた男性の「やりたいことは、ハローワークでは見つからないな、マジで」という言葉に、思わず聞き入ってしまったサカタさん。就活に至るまでの、キャリア教育の難しさとは? - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.