真夏にこんぶ茶を売れ! 季節外れに潜在需要を掘り起こしたO2O事例:カイモノマーケティング(1/4 ページ)
スマートフォンなどを使ってオンラインで客の興味を喚起し、実店舗に送客するO2O。この夏、ダイエー碑文谷店で行われた取り組みでは、こんぶ茶の販売数が前年比450%増にもなりました。
著者プロフィール:澤地正人
1976年東京都生まれ。店頭における営業活動や、販促支援、売り場づくりまでを行う「店頭マーチャンダイジング事業」を展開する株式会社マックス取締役。店頭を起点としたマーケティング部門の統括責任者として、価値を伝えきる売り場・売り方の実現について、メーカー様向けに流通戦略から店頭施策、販促企画など幅広いプランニングを手掛けている。近著に『セールスデザイン〜売れる仕組みの作り方〜』がある。
最近、「O2O(Online to Offline)」という言葉をよく聞くようになりました。商品やサービスの情報をPCやスマートフォンを使ってオンラインで得た顧客を、いかにしてリアル店舗に誘導するかという購買導線を作るための考え方です。ここには店頭からWebへという逆の流れの意味も含まれていますが、一般的にはWeb→リアルという流れが多いようです。
先日、筆者も参画したO2Oプロジェクトがありました。この結果を踏まえながら、O2O、つまりWebと店頭とが連携した購買の導線づくりをするにはどうしたらいいかをまとめてみたいと思います。
真夏にこんぶ茶を売るにはどうしたらいいか?
今回紹介するのは、主婦向けちらしサイト「シュフモ」と食品スーパー「ダイエー」の取り組みです。簡単にいえば、シュフモの会員に商品情報を送って、ダイエーの碑文谷店に送客します。
そして、今回のプロジェクトの対象商品は「こんぶ茶」です。「真夏にこんぶ茶?」と思われるかもしれませんが、そのまま飲み物として売るのではなく、調味料――トマトの冷製おでんの出汁としての使い方を訴求することで、オフシーズンの購買を喚起します。
まずはオンライン側の取り組みとして「こんぶ茶を使ったレシピ」を配信します。シュフモでは利用者が「お気に入りスーパー」を登録できますが、今回は碑文谷店を登録している「ユーザー」と、近隣の「ノンユーザー」にも情報を配信しました。店舗側からしてみると、普段使っている他店舗から自店舗への来店のきっかけ(ストアスイッチ)という効果も期待できます。
次にオフライン側の取り組みとして、トマトおでんの試食販売や店舗ですぐに使える割引クーポン発行のほか、売り場および店内の書店に「こんぶ茶のレシピ本」コーナーを設置しました。オンラインから集客した客に対して、店内での回遊、体験、購買という流れを作るための仕掛けです。
- 知る:メールや専用サイトで、碑文谷店のユーザーと近隣のノンユーザーに告知する
- 体験:トマトの冷製おでんを試食することで、こんぶ茶の新しい活用方法を体験する
- 回遊:レシピ本をトマト売り場と別フロアの書店にも展開し、相互集客する
- 動機:体験した後の購買後押しとして、50円引きクーポンを発行する
- 購買:こんぶ茶とトマトを購入する
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