「クールジャパン」は100年続くか?:中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(38)(2/2 ページ)
クールジャパン政策ってどうなっている? そもそも、大衆文化を政府主導で盛り上げられるものなのだろうか。キーワードはローカル、みんな感。さて、100年やり続けられるか。
さて、2013年春「クールジャパン推進会議」が開催された。稲田担当大臣、寺田副大臣、山際政務官、財務・外務、農水・国交・文科政務官らで霞が関がそろい踏み(編集注:内閣府による「クールジャパン推進会議」2013年3月4日に第1回を開催、以降定期的に開催されている)。委員は秋元康さん、角川歴彦さん、金美齢さん、コシノジュンコさん、佐竹力総さん、千宗室さん、依田巽さん。筆者はポップカルチャー分科会の議長として出席し、その席で筆者が取りまとめた提言を報告した。
以下はその全文である。
飛び出せ、日本ポップカルチャー。
ポップカルチャーが世界に飛び出す「発信力」を強化する。
このため、「参加」(短期)、「融合」(中期)、「育成」(長期)の3策を講ずる。
「みんなで」「つながって」「そだてる」。
みんなで――「参加」(短期)
世界中の子どもが知っているアニメもゲームも、海外の若者が憧れるファッションも、支えているのは消費者、ファンの愛情。クリエイター、キャラクター、事業者、そして何よりそれらを愛する国内と海外のファン。「みんな」の力を生かしたい。インターネットで多言語発信し、内外でイベントを開き、交流できる場や特区、さらには「聖地」を形作るなど、みんなが「参加」して情報を発信する仕組みを構築しよう。政府主導ではなくて、みんな。
つながって――「融合」(中期)
クールジャパンは、マンガやJ-popだけではない。歴史、風土、精神文化、もの作りの技術、それら全てが「融合」した総合力。そしてカワいいキャラクターやカッコいいヒーローは、政治体制の壁も乗り越えて世界に受け入れられる。ポップカルチャーには海外への先導役をお願いしつつ、食、観光はじめ多くの産業や伝統芸術、精神文化とも「つながって」、日本の総合力を発揮してもらおう。
そだてる――「育成」(長期)
ポップカルチャーを生むのは人。楽しむのも人。内外の人財を「育成」しよう。時間をかけて、トップを引き上げ、ボトムを厚くしたい。一流のクリエイターやプロデューサを育てる。彼らが意気に感じ、意欲を持って仕事に取り組むことができる環境を与えたい。海外のファンに正しい知識を与え、日本への視線を熱くする。子どものポップな創造力と表現力を育み、誰もがアニメを作れて作曲ができるようにする。このための制作環境や教育基盤を整えよう。
分科会委員の皆さんやネットでの意見も取り入れ、この3点にした。特に「政府主導ではなく、みんなで」を強調している。
クールジャパン推進会議では、この方向性を示した上で、この提言の下に具体的なアクションを打つことが大事だと述べ、「配信サイトやファンサイトに外国語翻訳を付けていくこと」「海外向けテレビチャンネルとネット配信を整備すること」「食・観光などと組み合わせた特区を作ること」「内外の大学にポップ講座を設けること」「子ども向けワークショップやデジタル教材を開発すること」を例示した。
一方、これも筆者が会長を務める知財本部コンテンツ専門調査会でも、著作権制度や海賊版対策などに力を入れており、それらも併せて、日本のソフトパワーが発揮できるよう、委員や政府関係者にお願いをした次第だ。
日本の良さ、トップ・ローカルの力
会議では、金さんが「日本人が日本の良さを知らないのが問題」と発言した。その通りだ。クールジャパンは10年前に米国から入ってきた概念である。日本が最もクリエイティブな国だと世界から評価されながら、日本人だけがそう評価していないという国際調査結果もある※。自らが自らを認識するのが出発点だ。
秋元さんはその席で、クールジャパンをけん引するプロデューサーの重要性を説いていた。その通り。中でも大事なのは、トップで引っ張る政治的リーダーシップだ。政府の皆さん、よろしく。また、金さんがある町で包装紙が統一されている例を紹介していた。そう、自治体がご当地キャラで町おこしをしているように、ローカルからの動きが広がっている。それを汲み取ることが重要だ。トップもローカルにも力を入れる。
「オールジャパンで」という発言もいくつかあったが、政府と民間委員が組合交渉のように対峙する会議ではなく、さまざまな「みんな」に入ってもらい、車座になって、ジャパンを超えて世界の方々も巻き込んで政策を作っていくことが必要だ。
さて、筆者の役目はここまで。後は国民の1人として、これから練られる政府のアウトプットを注視すると同時に、ハッパ掛けたりプレッシャーを掛けたりしていこうと思う。
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