カリスマ投資家はなぜコミケで“萌え”系マネー同人誌を出したのか?:五月&雄山スズコインタビュー(2/7 ページ)
仁義なきマネー戦争が繰り広げられる金融市場。その金融市場を題材とした“萌え”系の同人誌が、なぜか個人投資家たちによって作られ、コミケで人気を集めている。彼らはなぜ投資をテーマとした創作活動を行うのか。その動機とモチベーションに迫る。
クソ株は今、育ってきている
――そして「クソ株ランキング2009」「クソ株ランキング2010」と出していきました。「クソ株ランキング2010」は2011年11月末に公開と少し遅いタイミングになりましたが。
五月: 「クソ株ランキング2009」は再生数が「クソ株ランキング2008」を超えたのですが、僕の中で同じものを作ったという感覚がありました。見せ方の部分、動画としての進化がほぼなかったからです。せっかくやるんだったら、ビジュアル的に驚きを与えるというか、もっとかっこいいもの、もっときれいなものを作りたかったんです。
しかし、自分の運用もかなり順調でそちらにも労力を割かないといけなかった。動画は副業というか趣味なので、そこまでモチベーションが上がらなかったんです。そんな中で動画を出して、反応もいただいたのですが「焼き直し感があるな」と動画作りに対する気持ちが落ちてしまいました。それで「クソ株ランキング2010」は大幅に遅れてしまったのです。
――作成自体は2010年の年末からやっていたんですよね。モチベーションが下がりながらも「クソ株ランキング2010」を作ったのはなぜですか。
五月: やっていましたね。震災後に手が止まってしまったり、いろいろあったんです。でも、約束していたのでやり切らないといけないということで、11カ月遅れで作りました。2011年も終わるというときに、それだけはということで出しました。
あと、クソ株って景気がいい時に生まれるんです。お金が余っていると、投資や資金調達の判断が若干甘くなるじゃないですか。そこで、そういう人たちが入り込んでくる余地が生まれるのです。しかし、ライブドアショックとリーマンショックが重なった後で相当退出させられて、育つ土壌がなくなってしまいました。
なので、不謹慎ではあるのですが、2007、2008、2009と作っていくうちに、面白い大型クソ株がほとんどなくなっていたんです。2010を作っている時には小粒感しかなくて、エフオーアイ(上場6カ月後に粉飾決算で上場廃止)というラスボスみたいな企業が出てきて、「これでひとつ終わったな」という感じがありました。でも多分、今、また育ってきていますね(笑)。
――チャンスですよね。もう1回作ったりしないんですか。
五月: そういう人たちが出てきて、「あれ、おかしいぞ」となるのが多分、2、3年後くらいなので、もう少し後ですね。いまだに「次はないのか」と聞いてくれる人もいてうれしい半面、それに応えられないのは非常に申し訳なく思っています。
こういう動画を作っていた関係で、クソ株に詳しい人物として法務や会計の勉強会に呼ばれたりして、そこを起点に広がっていった人脈もあり、自分でも思いもしなかった反応や収穫は多かったです。実際に会うまでプロの市場関係者だと思っていた人も結構いました。
――クソ株ランキングという動画が話題になって、それなりに見られることが分かったのに、同じことをする人が出ていないようにみえるのはなぜでしょうか。
五月: 20分の動画を編集するのは手がかかるんですよね。感覚よりも事実の積み上げで、細かい数字も間違えないようにしているので。これくらいのクオリティを出そうと思うと、専業投資家として、1年間ずっとマーケットを見ている人でないと難しいと思います。機関投資家は担当がかなりセクターごとに分けられている世界なので、実はマーケット全体のことを知らないんです。特に小規模のクソ株の動向なんて、見ても仕事にならないので。
そういう意味では、こういう視点で1つの動画を編集するのは専業投資家が一番得意なのではないかと思います。ヒマもありますし。動画のために調べる時間というのは実はそんなになくて、1年やっていると、何となく今年はこういう構成になるなというのが頭に浮かんでくるというイメージですが。
――ちなみに動画を作ることで投資スキルも上がったりするのですか。
五月: どうですかね。でも、動画の材料になりそうなものを集めようという意識が働いて、情報をちゃんとチェックしようとか、面白いものがあったらスクリーンショットを撮っておこうということはありました。日々の情報収集に対するモチベーション維持につながった面はあるかもしれません。
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