カリスマ投資家はなぜコミケで“萌え”系マネー同人誌を出したのか?:五月&雄山スズコインタビュー(4/7 ページ)
仁義なきマネー戦争が繰り広げられる金融市場。その金融市場を題材とした“萌え”系の同人誌が、なぜか個人投資家たちによって作られ、コミケで人気を集めている。彼らはなぜ投資をテーマとした創作活動を行うのか。その動機とモチベーションに迫る。
なぜ同人誌を続けるのか?
――2009年4月からBusiness Media 誠でも『カブ・ジェネレーション』の連載をお願いすることになりました。媒体側からすると株の知識があって、マンガも描ける人は貴重なんですよね。
雄山: コミティアやコミケに行っても、「株や金融について描いている人は少ないな」といつも思っています。来てくださる方の中にはすごく濃い人たちもいて、私にはさっぱり分からない話をされることもあります。ただ、私が分からないほど濃い話ができる人たちにも楽しんでもらっているんだと思うと、うれしいですね。
五月: しゃべりたいんですよね。最近の投資はどうだったとか、今後の見通しはどうだとか。
雄山: 「政権が代わって、こうなってきたでしょ。これからこうなるでしょ」みたいな。でも何十分も話して、同人誌は買ってくれないということもあります(笑)。これだけ語れるなら1冊作れるのに……と思うこともありますね。失敗談でもいいから聞きたいよ、という人はいますから。
――発信したとしても続かないことはあると思うのですが、雄山さんが続けてこれているのはなぜですか。
雄山: 私が株をやめないからですね。リーマンショックの時に大分損をしたのですが、「これだけ損したら逆に引けない」というのもありました。私の場合は、損したらネタにすればいいですし。会社勤めなので毎月給料があって、投資資金も尽きないですから。尽きないって危険なんですけどね(笑)。やめる動機がないんです。
一方、会社の同僚とかが「僕は15万円損して、もう株なんかやめたよ」と言う人もいて、「それでやめちゃうんだ」と思ったりもしました。この差は何でしょうね。
――商業流通でも本を出しながら、同人誌も出すことにどういうメリットがあると思いますか。
雄山: 理想としては、商業流通の本のスピンオフを同人誌で出せればいいと思うのですが、商業流通でやりたいことをやらせてもらうと同人活動がやりにくくなってしまうところはあります。商業流通で需要がなくなってもやり続けていける場所があると思うと、それはそれで安心というのはありますが。
――同人誌制作に社会的な意義のようなものは感じていますか?
雄山: 私は趣味の延長や、仲間探しだったりしますね。株を始めたころ、友達と一緒に株主総会に行きたいという夢があったのですが、最近叶ってしまいました。スターバックスの株主総会に行ったのですが、その夢が叶うまでに5〜6年かかっているのかな。
株に対するハードルは高いですからね。私が一時期婚活していた時、婚活パーティとかで株の話をすると、男の人が引くんですよ。「株なんかやってんのか。やべえ、こんな女とは付き合えねえ」みたいに、露骨に引かれました。私としては話題が広がっていいだろうと思って話したのですが。男の人でも株嫌いというか、投資行為に対する敬遠があるので残念ですよね。
それもあって、もっと気軽に株をやっていいと知ってもらいたい気持ちもありました。スターバックスの株も今はアベノミクスで上がっていますが、安い時は3万円台で買えましたし、クソ株ではないですが数円の株もあるので、やってみるのは簡単なんです。もっと投資がカジュアルなものになったらいいんじゃないかと思います。
五月: まったく同感ですね。
雄山: でも、日本人はお金儲けに対する嫌悪感があるかもしれません。「お金のことを大っぴらに語るんじゃないよ」と言う人がいたり、「こんなにもうかっちゃったとか言うな」という雰囲気があったりしますし。
関連記事
- ライトノベルで農業を描いてみたらこうなった――『のうりん』著者インタビュー
現実と離れた題材が取り上げられることが多いライトノベル。そんな中、農業高校を舞台に大胆な筆致で農業に関わる人々を描いたライトノベル『のうりん』が静かに話題となっている。著者の白鳥士郎さんに、作品が生まれた経緯や反響について尋ねた。 - 行動経済学は社会を変えられるか?――イグノーベル賞教授ダン・アリエリー氏に聞く
伝統的な経済学のように合理的な経済人を想定せず、実際の人間による実験を重視する行動経済学。「高価な偽薬は安価な偽薬よりも効力が高い」などユニークな実験結果を示したことからイグノーベル賞も受賞した、第一人者ダン・アリエリー氏に行動経済学の可能性について尋ねた。 - コスプレサミットからカワイイ大使まで――外務省のポップカルチャー外交
外務省ではトップレベルでの折衝などとは別に、他国民に直接アプローチすることで対日感情を好転させるパブリックディプロマシー(対市民外交)という試みも行っている。12月30日、コミックマーケットで行われたシンポジウムで、外務省中東アフリカ局中東第二課長の中川勉氏が漫画やアニメなどを利用したポップカルチャー外交の現状を語った。 - 『カブ・ジェネレーション』バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.