中国で“成功の定義”が変わり始めている――どのように?:女神的リーダーシップ(1/4 ページ)
21世紀の中国をめぐって何を述べようともその内容はシンプルな事実ではありえない。この国は共産主義を掲げながら、資本主義も取り入れている。事業家や反体制派は当局に首根っこを押さえられており、隙を見てイノベーションや扇動を行うほかない。
集中連載「女神的リーダーシップ」について
本連載は、ジョン・ガーズマ+マイケル・ダントニオ著、書籍『女神的リーダーシップ』(プレジデント社)から一部抜粋、編集しています。
「世界を変えるのは、女性と“女性のように考える”男性である!」
ギリシア神話の女神アテナは、文化文明と芸術工芸の守護神であり、戦いの神としての顔も持つ、武力ではなく知恵によって人々に勝利をもたらす。
世界13カ国、6万4000人を対象にした調査から明らかになった、理想のリーダー像とは? 世界で成功している起業家、リーダーが示す特徴の多くは、思想や宗教、文化に関係なく「誠実」「利他的」「共感力がある」「表現力豊か」「忍耐強い」など、一般に「女性的」といわれる資質であることが浮彫となった。
ヒラリー・クリントン前国務長官が「賛辞」を送り、『ワーク・シフト』の著者、リンダ・グラットン教授が絶賛した話題の書、ついに翻訳化!
21世紀の中国をめぐって何を述べようともその内容はシンプルな事実ではありえない。この国は共産主義を掲げながら、資本主義も取り入れている。事業家や反体制派は当局に首根っこを押さえられており、隙を見てイノベーションや扇動を行うほかない。この国では伝統と先進、富裕層と貧困層、自信と不安が入り混じっているのだ。
中国最大の都市、上海では、旧市街の狭い通りの間に植民地時代の風情をとどめる低層の建物がひしめき、それを見下ろすようにして超近代的な摩天楼が林立する。巨大ショッピングモール恒隆広場〈プラザ〉ではプラダ、ベルサーチ、ディオールといったブランドものが売られ、そこから数ブロック先には、中国共産党第一次全国代表大会の会場となった中共一大会址記念館がある。街角で目にするのと同じようなパラドックスは、国政においても鮮明である。最高権力を一手に握る共産党指導部はこの10年というもの、社会の統制を緩めて経済成長を刺激しようと努めてきた。
共産党のこの戦略を受けて、消費、投資、輸出が目覚ましい伸びを示し、野放図ではないにせよ反政府勢力も増えてきた。人権面では、米国など海外の批判勢力を納得させるだけの進展はないが、平均的な市民の生活水準は急速に向上している。13億の人口を擁するこの国のGDP(国内総生産)は20年間で500%も増大した。さらに特筆すべきは、これらすべてが、1989年の天安門事件のような大きな騒乱なしに実現している点である。天安門広場のデモ隊を人民解放軍が武力鎮圧し、数百人の死者を出したあの事件を機に、市民の抵抗運動と政治行動はある程度抑制されたように見える。ただ、完全に影を潜めたわけではない。
変革と治安維持をどう両立させるかは、全国民にとっての懸案であるようだ。「『混沌(カオス)にだけは耐えられない』というのが、一般の中国人に共通の思いでしょう」とは、上海で長く事業・マーケティング分野のコンサルティングを手掛けるPT・ブラックの言葉である。「政府は人々を懐柔する術を知り尽くしていますから、社会がカオスの状態に陥らずにいます。そのうえ政府は、幸せな暮らしを送る機会を国民にもたらすことにかけても、鮮やかな手腕を発揮してきました」。事実、今日の中国では、創造性溢れる人材や起業家は、法律や規制に触れないかぎり、あらゆる分野で試行錯誤しながら前進できるようだ。PTは「この国では、『聞かざる、言わざる』が世渡りの極意です。これが実情なのです」とも語った。
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