映像配信サービスで救われた命:女神的リーダーシップ(4/6 ページ)
スウェーデンでは毎年、ノーベル賞の発表を機に誰もが国際情勢に思いを馳せる。自由や和平への関心はとりわけ高い。ウェブ上には数々の試合やパーティーのライブ映像がアップされているが、中東で若者たちが独裁体制に立ち向かう姿も伝えられている。
自国の現状に責任を持ちたいと願う人々
ヴィグは「僕らは責任をひしひしと感じています。情報をガラス張りにしよう、誠実であろう、という思いも強いです」と語る。バンブーザーの誕生によって、自国の現状に責任を持ちたいと願う人々にとって、情報をガラス張りにして誠実さを貫くための費用は下がってきている。ライブ映像のストリーミングが普及すれば、貧しい国々からさえも、イベントやアイデアの紹介が続々と届くだろうとヴィグは予想する。怒涛のような情報を品定めするのは、観る側の役割だ。アドラーは「僕らが中身にお墨付きを与えるようなことはしたくないからね。それはみんなが判断すべきことだ」と語った。考えや主張が自由に行き交うオープンな仕組みが、これに寄与するのは言うまでもない。ヴィグとアドラーは最近、中東の人々を対象に、バンブーザーを使って選挙を監視する方法の指導まで行うようになった。
バンブーザーが、あらゆる人とものを結び付け、あらゆる種類の表現を可能にするような、無限に拡大していく仕組みであるなら、リサーチゲートはじょうごのような役割を果たす。つまり、科学者や研究チームが難局にぶつかったときに、それを突破してブレークスルーを成し遂げられるよう、大勢の協力者からの情報や意見を集めて紹介するサービスだ。発案者はハーバード大学でウイルス学を研究していたイヤド・マディシュ。彼も研究者の例に洩れず、プロジェクトに行き詰まった折に同僚たちに助けを求めると取りつく島もなかったという。「一流の研究者たる者は、全知全能と見られなくてはいけない」といさめられたのだ。
幸いにも、マディシュは科学者として自信があったため、特定の手法や領域に自分よりも詳しい協力者を探すことに躊躇はなかった。とはいえ、実際に探すとなると暗中模索するほかなかった。出版物や論文を検索して自分の研究に関係する文献の発表者を見つけ出すのは、回りくどいうえに確実ではなかった。このとき彼は、見栄よりも成果を重んじる地球規模の科学者向けコミュニティの必要性を痛感した。
関連記事
- 「キュレーションで効率的に情報収集」の落とし穴――池上彰×吉岡綾乃(前編)
9月2日にリニューアルしたBusiness Media 誠。記念企画として、スペシャルインタビューを掲載していきます。最初に登場していただくのは、ジャーナリストの池上彰さん。編集長の吉岡綾乃と、ビジネスパーソンはどのように情報収集すべきかについて話し合いました。 - LINE、NAVERまとめはなぜ強いのか?――LINE株式会社 森川亮社長8000字インタビュー
人気サービス「NAVERまとめ」や、世界で2億3000万ユーザーが利用する「LINE」を急成長させているLINE株式会社の森川社長。矢継ぎ早にアプリやサービスをリリースする開発力や、「計画を立てない」「事業計画を出さない」といった独特の経営方針について、じっくり聞いてきました。 - 最初は売れなかった? これまで語られなかった「じゃがりこ」の裏話
「じゃがりこ」といえば、カリカリ・サクサクした独特の食感が特徴だ。カルビーが1995年に発売して以来、ロングセラー商品となっているが、開発秘話はあまり知られていない。開発に携わった担当者が多くを語らなかったからだが、18年経った今、当時の裏話を打ち明けてくれた。 - オバマ大統領が、本当に"change"したもの――Change.org日本代表 ハリス鈴木絵美さん
世界最大の署名サイト、Change.org日本版の代表・ハリス鈴木絵美さんは元マッキンゼーのコンサルタント。政治に興味がなかったという彼女はなぜオバマ大統領の選挙スタッフになり、さらに市民活動を仕事にしたのか? 日本人から見ると驚きの、米国の選挙事情を聞いた。 - メガネのネット通販で業界全部をひっくり返してみせる――Oh My Glasses、清川忠康社長
送料無料、返品無料、購入前に5本のフレームを自宅で試着可能というサービスをひっさげ、オンライン通販専業でメガネ業界に新風を巻き起こしつつある「Oh My Glasses」。創業者の目線の先にあるものとは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.