「アベノミクス」は本当に成功するのか:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
安倍政権が成立してから約1年が経った。アベノミクスの第一の矢、第二の矢までは効果があったが、第三の矢が最大の問題なのだ。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
安倍政権が成立してから1年余り。良くも悪くも日本に対する注目度は高い。
バブルの崩壊からなかなか立ち直れず、デフレという落とし穴にハマった日本が、2013年の1年で株価が5割以上も上昇した。為替相場は円安となり、輸出企業は一息ついた形だ。つまり、3本の矢からなるアベノミクスの第一の矢、第二の矢までは効果があったのである。そして、日本の潜在成長力を高めるために必要な第三の矢、すなわち成長戦略がどうなるか。ここに今世界が注目している。
さらにもう1つが中国、韓国との関係だ。もともと安倍首相が就任したとき、欧米のメディアは「タカ派」が戻ってきたと警戒感をあらわにしていた。年末に起きた突然の靖国参拝も悪い印象を与えたが、さらにダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)で安倍首相は、日本と中国の関係を第一次世界大戦のイギリスとドイツになぞらえた。経済的な関係が強くても、戦争することになることをほのめかし、ここから一気に日本のリーダーは「中国との戦争も視野に入れている」という雰囲気が生まれてしまった。
ダボスで英国とドイツの関係を引き合いに出したのは、2014年が第一次世界大戦から100年にあたる年だからだ。欧州のメディアはこぞって「100年前の教訓」というような企画の記事を執筆している。2013年12月初め、フィナンシャルタイムズ紙のコラムニスト、マーティン・ウルフ氏は「中国はドイツの過ちを繰り返すな」と書いた。
当然、安倍首相はこの記事のことを知っていただろう。だから、東アジアにおける日中関係で、有力メディアは日本のバックにつくと思っていたのかもしれない。しかしそれは大きな勘違いである。
今や、中国は日本の2倍近い経済規模を持っており、中国には多くの欧州企業も進出している。欧州の立場で言えば、経済的な連携では日本よりも中国のほうが関係が深い。実際、ユーロ圏の国が債務危機に陥り、その救済に奔走したとき、EUが真っ先に助けを求めたのは中国だった。
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