日中間の戦争が“絶対にない”とは言い切れない理由:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
中国へ“挑発的”な発言をしているのは安倍首相だけではなく、首相周辺でもそうした発言が出てきた。領土問題に対して強硬な態度を取ってきた中国の実績を見ると、日中間の戦争は“絶対にない”とは言い切れないのだ。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
どうも、このところ日中間の関係に不穏な空気が漂っているように見えて仕方がない。2013年末の靖国神社参拝、ダボス会議での発言など、安倍首相の“積極的”な行動に海外のメディアはびっくりしている。「日本は中国との戦争を覚悟しているのか」と疑ったのだ。
しかし、そうした発言をしているのは首相だけではない。今度は首相周辺の発言が相次いだ。1つは靖国参拝に“失望した”と発言した米国に「むしろ米国に失望した」という衛藤晟一首相補佐官の発言。そしてもう1つは、米ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューで「経済を強くすることで軍事力を強化し、中国に対峙(たいじ)する」とした本田悦郎内閣官房参与の発言である。
もちろん、こうした急進的な動きをしているのは日本だけではない。中国が(言葉もさることながら)空母機動部隊をはじめ、着々と海軍力を強化しているのは周知の事実だ。2014年2月、米国サンディエゴで開かれた米海軍のカンファレンスで、米太平洋艦隊の情報担当トップのジェームズ・ファネル大佐は、中国海軍の演習について「2013年に行われた大規模な演習で、中国海軍は東シナ海の尖閣諸島を奪取する作戦に備えようとするものだ」と語ったという(参考記事)。
今どき「領土的野心」を隠そうとしない大国も珍しいが、中国は南シナ海で領土を“奪取”した実績がある。ミスチーフ礁における領土問題だ。このときはフィリピンが相手だったが、もちろん日本が相手となるとフィリピンのようにはいかない。しかし、中国がそこまで攻撃的な姿勢を取ったときに、日本はどうするべきなのか。
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