今、大きな注目を集めるクラウドファンディング:入門クラウドファンディング(1/2 ページ)
そもそも「クラウドファンディング」とは何でしょうか。本連載では、国内外で大きな話題になった事例を皮切りに、その定義や歴史、現在の市場状況から基本的な実施方法までクラウドファンディングの基礎知識を紹介します。
集中連載「入門クラウドファンディング」について
本連載は、山本純子著、書籍『入門クラウドファンディング』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。
本書は国内外の諸事情に通じた気鋭のコンサルタントによるわが国初となる「クラウドファンディング」の本格的な入門書です。
不特定多数の人たちをフォロワーに変え、資金を提供してもらいプロジェクトを実現する仕組み――それがクラウドファンディング。クラウドファンディングが大きな注目を集める“本当の理由”とは? 単なる資金調達の手段を超えてプロジェクトの進め方を大きく変える、新しい“おカネの集め方”です。
キックスターターといった世界最大のプラットフォーム、莫大な資金調達をクリアしたプロジェクト、世界的映画監督が仕掛けたプロジェクトに対するさまざまな議論の応酬など、興味深いエピソードも満載。起業家(予備軍)やベンチャー経営者のみならず、一般企業の経営者必読の1冊です!
6万9000人から1000万ドル以上集めたベンチャー企業
クラウドファンディングの“伝説”
2012年4月11日、米国の「クラウドファンディング」サイト、キックスターター(Kickstarter)でひとつの資金調達キャンペーンが開始されました。
そのキャンペーンを立ち上げたのは、カリフォルニア州パロアルトにあるペブル・テクノロジー(Pebble Technology)社という、当時設立者ほか9名からなる小さいハードウェア会社。彼らは、自社の新商品として試作を続けていた「ペブル(Pebble)」──iPhoneとアンドロイドに対応するスマート・ウォッチ(※1)の製品開発費を、インターネットを通じて人々から調達しようとしていたのです。
目標の調達金額を10万ドル(約810万円。12年4月11日時点の為替1ドル=約81円で計算。以下、特に断らない限り当時の為替換算)と設定したこのキャンペーンは、開始と同時に瞬く間に資金を集め始め、なんと初日2時間で目標調達額に達してしまいます。さらに目標額を超えても、資金提供する人たちの数は増え続け、翌12日には100万ドルを突破したのです。
予想以上の快進撃に、多くのメディアがペブルとペブル・テクノロジー社、そしてこのクラウドファンディングによるキャンペーンのことを取り上げました。そのPR効果も相まって、最終的に39日間の資金調達キャンペーンが終了した時点で、彼らは6万8929人から1026万6845ドル(約8億1108万円)を調達しました。
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