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年俸6億5000万円は、本当に「高い」のか? ベテラン「イチロー」の価値臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)

天才バッターが岐路に立たされている。新戦力下のヤンキースでは「開幕スタメン落ち」で「外野手の5番手」という扱い。ただ、一方では「他のどんな選手にも勝る」と高い評価を受けている。この“ベテランの価値”をビジネスの現場になぞらえながら再認識しよう。

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なぜイチローは再評価されたのか

 このキャッシュマンGMのコメントは日本のメディアでなぜか全くといっていいほど取り上げられなかったが、ヤンキースがイチローをどう評価しているかを知る上で、とても興味深い発言である。

 この発言から判断する限り、キャッシュマンGMはイチローをトレード要員ではなく、必要な戦力として見ている。何かと批判の対象となりがちなイチローの高額な年俸についても「それだけの価値があると期待したから“投資”した」とまで断言している。キャッシュマンGMの言う通り、まだシーズンが始まったばかりで結果が出ていないにも関わらず「高い」と決め付けるのは確かに早計かもしれない。

 それにしてもキャッシュマンGMは、なぜトレード要員だったイチローの存在の重要性を再認識し始めたのか。その理由は、ここに来て鉄壁と思われていたヤンキース外野布陣に早くもほころびが見えてきたことが挙げられる。その筆頭が正中堅手のエルズベリー。輝かしい経歴を誇るスーパープレーヤーだが、前所属チームのボストン・レッドソックスでは2010年に肋骨骨折の影響で3度も故障者リスト(DL)入りし、2012年もシーズン開幕直後に右肩を亜脱臼して74試合の出場に終わっていた“前科”があることから故障が懸念されている。開幕前にもエルズベリーは右ふくらはぎを痛めており、チーム内からも「また故障するんじゃないか」と疑念の目が向けられている。イチローより“格上”とされる控え要員 ソリアーノも故障が多く、年間を通じてベストコンディションを保てるかといえば「?」が付きまとう。

 その点、イチローには「故障の心配がほとんどない」という大きな強みがある。

 これまでのメジャー生活のなかで故障者リスト入りしたのは、胃潰瘍をわずらって開幕から2週間ほど戦線離脱した2009年シーズンのたった1度のみ(開幕前に第2回ワールド・ベースボール・クラシックへ出場し、疲労を蓄積させたことが主な原因とされている)。これは負傷に悩まされるケースが大半を占めるメジャーリーガーの中では特筆すべき高い評価ポイントであり、この点においてキャッシュマンGMも、ジラルディ監督も「他のどんなメジャーリーガーも、イチローには及ばない」と口をそろえて激賞している。フロント、現場の2トップがともに「故障をしないイチロー」を高く評価していることは、お分かりいただけるであろう。

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