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ドラッカーと孔子の思想が似ているのは2人とも「ファシズム」を憎んでいたから?:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
東京大学の安冨歩教授が『ドラッカーと論語』という本を出した。ドラッカーと孔子を結びつけるなんて強引では? と思われるかもしれないが、この2人、驚くほど同じようなことを言っている。それは……。
「ファシズム」とは何か
日本語版では「専制」と訳されているが、これはファシズムのことに他ならない。つまり、ドラッカーも孔子も、人間社会は放っておくとファシズム(覇道)へ向かって突っ走っていってしまうことに気づき、なんとかそれを食い止める方法はないかと考えに考えぬいたというわけだ。それが『マネジメント』であり、『論語』だったというわけだ。
同じ問題に直面した者同士が、同じ結論になるのは決して不思議な話ではない。2500年を経た2つの思想書の根っこが同じなのはこれが理由だ、と安冨氏は言う。
そういう意味では、集団的自衛権行使容認が閣議決定され、「安倍首相は独裁者だ!」「安倍政権はファシズムだ!」なんてプラカードが国会前に連日のようにあってワーワーやっている今の時代にピッタリな本という気もする。
ちなみに、「ファシズム」の歯止めになる「君子」について孔子はこう述べている。
子貢が尋ねた。
「君子もまた、誰かを憎むことがありますか?」
孔子は答えた。
「憎むことがあるよ。人の悪いことを言い立てる者を憎む。人の下にいながら、上に立つ人に対して根拠なく悪口を言う者を憎む。勇気があるが礼のない者を憎む。徹底して物事を進めるが、道理の通じない者を憎む」(ドラッカーと論語より引用)
「ファシズム」とは何か。どうすればその暴走を食い止めることができるのか。「ファシズム」を憎むすべての人たちに読んでいただきたい。
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