生活は便利に、でもプライバシーは“丸裸”? ビッグデータ活用の光と影:「日常」の裏に潜むビッグデータ(2)(3/3 ページ)
ビッグデータを分析し、ビジネスに役立つ新たな“気付き”や“予測”を見つけるために各企業が動いている。そうした分析は、私たちの生活を便利にしてくれる一方で、人が気づけないプライベートな事情すら丸裸にしてしまう可能性も秘めている。
ビッグデータでプライバシーが“丸裸”に?
少し話を戻そう。冒頭のドラマのやり取りを、“怖い”“不気味”“気持ち悪い”と思った人もいるのではないか。ビッグデータ活用の話になると、必ずと言っていいほどこういった認識を持つ人が出てくる。無理もないことだ。
最近の分析技術は、いつもと違うものを買ったり、ショッピングする時間が変わった――といったデータを拾い上げて分析することで、次の行動を推測できるレベルに達しているという。米国とカナダで1900店を越える店舗を持つ大手小売りチェーンは、自社で管理する顧客のクレジットカード、名前、購買履歴を保存する電子メールといった膨大なデータを使い、高度なデータ解析(マイニング)を行うことで知られている。
その精度は想像以上に高く、プライバシーを脅かす事件に発展した例もある。ショップがある女性顧客にベビー用品のクーポンを送ったが、相手が高校生だった。「娘は妊娠などしてない!」と父親がクレームをつけたが、それがきっかけで実は妊娠していたことが分かったというのだ。
ビッグデータの分析は、家族が知らないプライベートな事情さえも丸裸にできる可能性がある。この技術が犯罪に利用されたらどうなるだろうか。特に携帯電話やスマートフォンから日々収集されるリアルタイムデータをどう分析するかという研究は、世界中で急速に進められている。
その研究機関の1つである、米マサチューセッツ工科大学メディアラボの伊藤穣一所長によると「携帯電話から個人情報が追跡されないように、10分ごとに電話を捨て続けたとしても、電話をかけたりメールを送った相手側の履歴が収集されていれば、それを元に個人を特定できるところまで技術は進んでいる」と話す。
今後、ビジネスへの活用のために、ますますビッグデータの需要は高まり、さまざまなデータを収集する動きが加速するのは間違いない。事前に了承した上でデータを提供しているならともかく、無意識の日常行動からデータを収集され、意図しないところで利用される可能性は高まる一方だ。
冒頭のドラマに登場したベンチャー創業者は、自分が開発したサービスで、知られたくない個人情報を晒され、自滅するという結末を迎えた。自分が扱うデータさえも完全にコントロールできない社会がこれから来るのかもしれない。
ビッグデータ時代では、個人のデータはどのように扱われるようになるのか。そこに問題はあるのか。次回は、パーソナルデータの取り扱いに焦点を絞り、いくつかの事例を交えてその是非に迫っていく。
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