競争せず、適応しているだけ? 彼氏・彼女ができない理由は2つ:仕事をしたら“動物”のことが分かってきた(後編)(3/5 ページ)
明治安田生活福祉研究所が行った調査によると、20代独身男性「現在恋人がいる」のは22%、30代独身男性では同15%という結果に。数年前から「草食男子が増えてきた」と言われているが、その背景には何があるのか。動物行動に詳しい、竹内久美子さんに聞いた。
ヤクザルも繁殖しないときがあった
竹内: 「彼女をつくらない」「子どもをつくらない」という背景には「景気が影響している」と話しましたが、第二次世界大戦中はいまとは比較にならないほどモノが不足していましたよね。当時の男性って恋愛に消極的だったのかな。ま、いまと違って自由恋愛はほとんどなかったので、比較することは難しいですが。
土肥: アベノミクスなどの影響で、いまは大企業を中心に「給料が上がった」と景気のいい話が出てきました。とはいえ日本は長い間、「不景気」に悩まされてきました。デフレに陥り、株価はなかなか上がらず、給料もなかなか上がりませんでした。とはいえ、戦中に比べたら裕福ですよね。いまは小学生でもスマホを持っていますから。
ではなぜ、モノがあふれているのに「不景気」と感じるのか。それは比較対象が「高度経済成長期」や「バブル経済」のときだからではないでしょうか。例えば、バブルのときの日経平均株価は3万円を超えていたのに、いまは1万5000円前後。まだまだ景気は半分ほどしか回復していない、といった感じで。
いまの若い人たちは景気のいいときを知らない。よく分からないのに、メディアが「景気が悪い」「景気が悪い」と何度も何度も言うので、心のどこかに刷り込まれてしまったのかも。「そうか、いまは不況なのか。将来年金ももらえなくなるかもしれないし、不安だ。給料もなかなか上がらないし、結婚はまだできないな」となりますよ。
竹内: なるほど。
土肥: 戦時中は、明日死ぬかもしれないので「自分の子どもを残さなければいけない」という気持ちが強かったのかもしれません。ということは、当時の男性は、そのときの状況に“適応”しているわけですよね。
竹内: ですね。
土肥: 動物の世界でも「いまは子どもを産むときではない」と判断したりするのでしょうか?
竹内: ありますね。繁殖してもうまく育てられないだろうなあと判断したら、産みません。例えば、鹿児島県の屋久島にいるヤクザル(ニホンザルの亜種)は、大変なエサ不足の年があったのですが、その年の繁殖シーズンにはまったく繁殖しませんでした。産んでも育たないし、そもそも胎児すら育たないことを本能的に察知したのでしょう。
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