トヨタ流米作りで“ニッポン農業”を強く、元気に:“カイゼン”と“ビッグデータ”を稲作へ(4/4 ページ)
トヨタ自動車が新境地に挑む。農業分野にカイゼン活動を持ち込むとともに、クラウドとビッグデータを駆使した稲作支援サービスを開発。早くも劇的な成果が出ているという。
“稲作ビッグデータ”の活用
なお、豊作計画のベースになっているのは、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウド型CRM(顧客情報管理)システムである。トヨタはセールスフォースの主要ユーザーとして知られており、2011年5月にはクルマ向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携も行っている。
こうした背景もあるが、豊作計画をクラウドサービスにしたのには別の理由もある。それが“稲作ビッグデータ”の活用だ。「米生産農業法人は大きくても従業員10人程度の規模に過ぎない。一法人だけではなく、法人間の横連携を強めて大きなネットワークの中でデータやノウハウを共有すれば、農業分野におけるカイゼン活動もさらに進むはず」と喜多氏は説明する。
サービスを利用する法人が増えれば増えるほど、クラウド上に多くのデータが蓄積される。そのビッグデータを分析することによって、例えば、他社と比較した自社の作業効率性やコストパフォーマンスなどを知ることも可能だし、品質の高い米作りの最適な方法を共有できるようにもなる。
「これまでは自前主義で情報を隠すという意識が多くの農業法人にあったが、お互いに情報共有することが事業成長につながるはず」(喜多氏)
愛知・石川の農業法人で課題などを共有
そうした枠組みを作り、取り組みを拡大すべく、トヨタは2014年4月から農林水産省が主催する「先端モデル農業確立実証事業」に参画。愛知県と石川県の米生産農業法人9社(鍋八農産、こだわり農場鈴木、グリーンフィールドエノサン、LI・FHAM、たけもと農場、アジア農業、六星、アクリスターオナガ、内浦アグリサービス)と共同でコンソーシアム「米づくりカイゼンネットワーク」を立ち上げた。
この中で豊作計画を導入し、ビッグデータを共有するとともに、そこから見えた課題やその解決方法を紹介しながら、改善活動をサポートするところまでを3年間で実証実験として行う。2014年は原則として米づくりカイゼンネットワークの9社に限定するが、2015年からは外部に順次サービス展開していく。
ただし、トヨタの農業に対するこれらの取り組みは、あくまでも社会貢献としての意味合いが強く、事業として大きく伸ばそうという意向は今のところ薄いそうだ。「ものづくりで培ったノウハウを農業分野でも生かすことで、日本の農業の活性化や競争力強化につなげていきたい」と喜多氏は意気込んだ。
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