消費増税の先送りで「笑う企業」「泣く企業」:10%引き上げは2017年4月に延期の見通し
第一段階として2014年4月に8%へ税率アップした消費税だが、2期連続のGDPマイナス成長などを受けて、2015年10月に予定していた税率10%への変更に“待った”がかかりそうだ。
安倍晋三首相による消費税増税の先送り表明が秒読みとなった。厳しい日本財政の再建を目指した一連の増税施策だったが、2014年7〜9月期GDP(国内総生産)の落ち込みなどが顕著となり、当初2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2017年4月に延期する見通しだ。これを受けて日本企業にどのような影響があるのだろうか?
増税先送りのプラス要因
まずはプラス要因について、「今期(2015年3月期)に続き、来期(2016年3月期)も全産業ベースの経常利益で増益が見込める」と楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは語る。仮に2015年10月に10%への消費増税が行われると、来年度下期(2015年10月〜2016年3月)に景気および企業業績が落ち込む可能性が高かったという。
もう1つの要因として、円安が進みやすくなるため輸出企業にとってメリットがあるとする。
かたや増税延期によるマイナス影響は何か。窪田氏は「長期的な財政健全化が遅れるので、理論的には長期金利が上昇しやすくなる」と述べる。ただし、短期的には金利上昇は限定的と見ている。企業の投資意欲低下などによって銀行の融資先がないなどの、いわゆる国内のカネ余りは簡単に解消しないことに加え、日銀が異次元緩和、追加緩和と金融施策を相次いで実施しているからだ。
勝ち組はどこ?
消費税増税が延期されることで、特に影響がある企業や業種はどこだろうか。
“笑う企業”は、1つに「食料品・小売業全般」と窪田氏。食料品については軽減税率を導入する案が出ているが、2015年10月の増税だと免税範囲の策定などが間に合わず、そのまま増税になるリスクがあった。増税延期の間に食料品の免税範囲が決定する可能性が高いという。小売業については、消費者の買い控えなど増税の影響を直接的に受けるため、先送りはメリットだとする。
そのほか、建設、住宅、マンション、自動車メーカー、自動車ディーラー、家電量販店、百貨店、旅行代理店など、高額品や高額サービスを扱う企業も、消費税の引き上げで大きな影響を受けるため、たとえ1年半でも増税の先延べはメリットであるという。
一方で、“泣く企業”の1つは「IT企業」だと窪田氏は言う。増税に伴い会計システム更改などの案件が入る見込みがあったが、先送りによって2015年は増税にかかわる案件は入らない可能性が高い。
泣くとまではいかないが、100円ショップや牛丼チェーンなど、低価格を売りにしている業態も少なからず影響を受ける。2014年に続き、2015年も増税すれば、低価格業態に「財布のひもが固い」消費者が流れるという追い風が吹く可能性が高かったが、それもなくなった。
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