借金には2つのパターンがある――悪い借金をする人がハマる落とし穴:新連載・お金もセンス(5/5 ページ)
金融やお金にまつわる話になると、どうしても難しく語られがちなので、敬遠する人も多いのでは。筆者の森永賢治さんは「お金の知識」ではなく、「お金のセンス」を磨けばスムーズな生活が送れるという。連載1回目は「借金」の話。
「借金」におけるセンス
これから描くA氏は、複数の人から抽出したステレオタイプであることをご了承いただきたい。
A氏のキャッシング利用のきっかけは、ちょっとしたケガの治療費としてだった。借入金額も数万円というレベル。しかし、元来ギャンブル好きな彼は、負けが込んできた時に折角作ったのだからとカードローンを使うようになる。それから、あっという間に借金が増え、利子の返済に追われる日々が続く。そして、そのうちに離婚。今は独り暮らし。よくドラマで見るような光景だが、その時の心理状態についてのコメントが非常に興味深かった。
(1)恥ずかしいから、プライドがあるから“見栄を張る”
人に知られたくないから妻にも当然嘘をついていた。また、お金がないとか借金があるとか思われたくないから気前よく人におごったり、大きな買い物をしたりした。
(2)借りれるお金は「自分のお金」
いつのまにか、借金も自分のお金として勘定した生活習慣になってくる。借りれるうちは借りないと損という気持ちで、そのうち借金を収入として勘違いし働くのをバカらしいと思うようになる。
(3)ストレスがたまり冷静な判断を失う
常に借金のことばかり考えているのでうつ状態で自分にも自信が持てなくなる。すべてにやる気を失い、問題を先送りにしようとする。とにかくすべてのプライオリティは次回の返済。同時に、一発逆転を狙って投資やギャンブルに向かうが、さらに借金を抱え込むことになる。
上記の3つは一例だが、お金との付き合いのバランスを失うと、さまざまな心理状況の中で負のスパイラルが起こる。当事者でなければ、なかなか理解しがたい心理かもしれないが、これは誰にも起こりうる負の連鎖なのである。「貧すれば鈍する」……まさに、平時であればありえないよう思考と感情で正常な判断ができなくなるのだ。
「借金」におけるセンスとは、常に、自分がどの状況にいるか判断し、ネガティブなスパイラルに陥らないよう気をつけるバランス感覚である。前向きな状況での「借金」は、むしろ人を成長させ、モチベーションを高めるエンジンでもあるのだ。
関連記事
- 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか
従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.