「妖怪ウォッチ」クロスメディア戦略の功と罪:ヒットの裏側ニャン!(2/3 ページ)
アニメや漫画だけでなく、ゲームソフトやグッズの売れ行きも好調な、子どもに大人気の「妖怪ウォッチ」。なぜ、妖怪ウォッチはここまでのヒット作となったのか。今回は、ヒットの裏を探ります。
レベルファイブのターゲットユーザー
レベルファイブのターゲットユーザーの大きな特徴は、従来、ゲーム市場が対象としてきた小学、中学生の層です。スマートフォンのような汎用機ではなく、ニンテンドー3DSなどの専用のハードが必要になる家庭用ゲームソフト市場で、昨今20代向けの商品が多く展開される中、レベルファイブはターゲットを変えないままソフトを作り続けてきました。
コアなゲーマー層には物足りないストーリー・システムだと評されることも少なくありませんが、それでも子供向けの市場で成功を収めてきたことは事実です。
ここまでは年齢という視点で、レベルファイブのターゲットユーザーについて述べてきました。次は、プレイヤータイプという視点で述べていきます。
この図は「バートルテスト」という分類方法に基づいて、プレイヤータイプの位置付けを表したものです。それぞれのユーザータイプの特徴は、次のようにまとめられます。
- アチーバー(Achiever):ゲーム内で提示された目標を達成することで満足感を覚える傾向が強い
- エクスプローラー(Explorer):ゲーム内の世界に関する新しい発見をすることで充足する
- ソーシャライザー(Socializer):他のプレイヤーとの友好的な関わり合いを好む
- キラー(Killer):他のプレイヤーに対して自身が優越している状態を目指す
このプレイヤータイプの分類を前提に、妖怪ウォッチのゲームシステムを見ていきましょう。大きく3つの要素に分けることができます。
- 身近に感じる日常設定の中にコミカルな妖怪が登場し、プレイヤーをゲーム内の世界に違和感なく没入させる「エクスプローラー」
- 200種類以上の妖怪が存在し、コレクター欲をかき立てられる「アチーバー・エクスプローラー」
- 攻撃に秀でた妖怪、防御が得意な妖怪などそれぞれの特徴を持つ妖怪たちを6匹選出し、バトル中は前衛、後衛に振り分けてバトルをする。通信対戦では成績に応じて自分の持つランクが変動する「キラー・アチーバー」
ここまでであれば、見せ方は違えど他のゲームソフトでももちろん同じような構成要素は見られます。しかし、レベルファイブにとってここまで挙げた要素はあくまでもソーシャライザーに対する起爆剤でしかありません。
レベルファイブ最大の強みは、ほとんど毎日友人と顔を合わせる環境にある小中学生の層に対してゲームを先行発売し、間を空けることなくアニメ、コミック、グッズで展開することでゲーム外の世界でも「妖怪ウォッチ」の世界観を共有できる環境を作った点にあります。ゲームソフトだけでは満たせないソーシャライザーのニーズを、レベルファイブは素早いクロスメディア戦略によってつかみました。
また毎年のように新しいシリーズを生むこと、そしてシリーズ展開を加速させることで、ユーザーを飽きさせないことも重要な戦略方針です。
これらは全てCERO A、つまり全年齢向けタイトルであり、CERO B(12歳以上対象)以上のタイトルはほとんどありません。
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