そろそろJRグループは“コミケ臨時列車”を検討しよう:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット」は今年で40周年を迎えたという。2014年末の第87回(C87)は3日間の動員数が56万人に上った。会場アクセス手段の「りんかい線」と「ゆりかもめ」もフル稼働で対応した。JRもこの“需要”を真剣に考えたほうがいい。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
コミックマーケット、通称コミケは年に2回、夏と冬に開催される。第1回は1975年12月で会場は日本消防会館(虎ノ門)の会議室。参加サークルは32、参加者は約700人だった。それが成長を続け、現在の会場は日本最大の展示場「東京ビッグサイト」。直近2014年12月のコミケでは、参加サークルは3万5000に上り、来場者は1日目に18万人、2日目に17万人、3日目に21万人とのこと。のべ56万人の参加者が集まった。2014年の東京ゲームショウの来場者数が4日間で約25万人、2013年の東京モーターショーは10日間で約90万人だった。コミケの1日あたりの平均来場者数は、これらを大きく上回る。
出版ビジネスに乗らないけれど、同じ志向の人は必ずいる。それは10人かもしれない、100人かもしれない。コミケは、そんな小さな規模の自費出版が集積した大マーケット(市場)である。私も数年前の夏のコミケに行き、鉄道関係の貴重な資料を入手した。そこでしか手に入らないとなれば、たった1冊を求めるだけでも人波をかき分けて出陣する価値がある。コミケはそんな人が56万人も集まった。それぞれの価値の集合だといえる。
多少のイザコザはありそうだけど、これだけの人々が集まっても大事故には至らない。これは参加者の誰もが誇りに思っていると思うし、客観的に見ても日本の誇りと思っていい。有志のイベントがここまで成長した背景には、すべての関係者が理念を共有し、ブレずに努力してきたからだろう。参加者の意識を高め、整然とした行動を促す。その運営手法は集客にかかわるビジネスにとって大いに参考になる。
昨年末にJR東京駅で起きた100周年記念Suicaの行列騒動など、コミケの規模に比べれば、たった9000人であの体たらくだ。テレビのニュースであの騒動に関連して「コミケがあれだけの参加者で混乱しない理由は、誰もが平等に扱われていると認識しているから」というコメントがあった。確かにそうだろうと思う。私もコミケでは会場整理の都合からか、入場から退場まで長い行列を歩いたけれど、それは誰もが同じだから不満はなかった。むしろ行列が周りの参加者との会話を楽しむ場所のように思えた。
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