東京は上海に勝てるのか? モーターショービジネスを考える:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
「東京モーターショーは、世界の5大ショーの1つ」……上海モーターショーの台頭により、これは過去の話になりつつある。巨大な中国市場を抱える上海に、東京が勝つ手だてはないのだろうか? 池田氏は「ジュネーブがヒントになる」と指摘する。
東京モーターショーが目指すべき道は?
東京が国際格のモーターショーであり続けるには、「アジア全体のための東京モーターショー」への道を模索するしかない。おそらく、中国という巨大マーケットを背景に持つがゆえに、上海はそうはなれないだろう。現在のところアジアNo.1モーターショー争いにはまだ市場規模以外の要素がなく、その点東京は不利だ。しかし欧州で起こったことを念頭に置けば、遠からず地域公益性が大きな意味を持つ時代が必ずくるだろう。
アジアには成長著しい魅力的なマーケットが沢山ある。インド、韓国、タイ、インドネシア。アジアパシフィックとして見ればオーストラリアも入ってくる可能性があり、自動車産業の成長エンジンとなる素質は十分だ。こうした周辺諸国のモータリゼーションの発達のために役立つ取り組みを行えば、今からでも東京モーターショーがアジアNo.1のモーターショーになる可能性は十分にある。
懸念するのは、東京モーターショーの主催団体がJAMAだということ。JAMAの役員一覧を見れば歴然だが、日本の自動車メーカーの社長以下重鎮がずらりと名前を連ねている。彼らがどう考えるのか――東京モーターショーにあくまで自社利益を求めるのか、大所高所から日本の自動車産業のプレゼンスを考えていくのか――これが今後、東京モーターショーの岐路を分ける重大なポイントになるはずだ。
しかし、もうのんびりと考えているほどの時間は残っていない。舵を切るなら、早い方が良いことは間違いないのだから。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
関連記事
- 新連載・池田直渡「週刊モータージャーナル」:デトロイトショーの面白さは、ビジネス視点で見ないと分からない
現在北米・デトロイトで開催中のモーターショー。新型NSX、レクサスGS F、インフィニティQ60コンセプトなど注目のクルマが登場しているが、メディアへの露出は少なめ、正直「地味」な印象だ。しかし、ビジネスの観点から見ると非常に面白い、と筆者の池田氏は指摘する。その理由とは……? - 次世代のエコカーとスポーツカーに注目――東京モーターショー2009
世界3大モーターショーの1つ、東京モーターショーが10月21日、報道陣に公開された。海外勢の参加取り止めが相次ぐ中、クルマとバイクを合わせて270台が出展し、そのうち39台が世界初登場となった。【写真追加】 - まるで“HVとEVの見本市”――フランクフルト国際モーターショーを見てきた(前編)
世界3大モーターショーの1つ、「フランクフルト国際モーターショー」が開催された。クルマ産業が苦境に立たされている中、どのようなクルマが注目されているのだろうか。時事日想では2回に渡り、ドイツのクルマ事情を絡めながら、モーターショーの様子を紹介する。 - デトロイトモーターショー2013:米ホンダ、進化した「NSXコンセプト」を披露
2012年のデトロイトモーターショーで発表された「NSXコンセプト」。2013年にアップデート版が公開された。注目は「ヒューマン・サポート・コックピット」だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.